「天使と悪魔」(2009)

上手くまとまっていた映画だと思う。
原作のサスペンス性を強調させ、省けるところはバッサリカット。「ダ・ヴィンチ・コード」が粗筋をなぞるだけになってしまったのと比較すると、十分楽しめる娯楽映画でした。

というわけで原作と比較した感想を。








原作よりも「科学VS宗教」の色合いが薄まってしまうのは仕方ないですね。セルンの所長を登場させなかったし、亡くなった教皇とカメルレンゴの関係も変えられていたし。

でもそのせいでカメルレンゴの最期の意味が軽くなってしまったのは残念。彼の信念は、彼がしでかした諸々以上に彼の中では正義だったのに、映画じゃ「ただ悪事がバレたから自殺した」ってだけにしか見えない。
まあ彼の真意を知りたければ本を読んで下さいってことになるのかな。

これは本の話になるのだけど、カメルレンゴ的にはどうなんだろうね、自分が人工授精で出来た子だというのは。
彼は行き過ぎた科学を真っ向から否定しているけれど、自分の存在が最先端科学の賜物だというのは、彼的には許せることなのかなあ。
まあ彼の自殺の理由は、自分の存在云々より、ひとえに「親殺し」を犯してしまったことにあるようなんだけど。
そういえば、そうと知らずに親を殺すというのはギリシア悲劇ですね……。

彼の母は要するに処女受胎ということで、恐れ多くもカメルレンゴとイエスは同じ様な存在とも言えるし、改革者を目指すところなんてかなり似てるんじゃないかとさえ思うんだけど、そういう風に考えるとカメルレンゴの罪深さは一層増してくる。彼の行動は全て彼が言うところの「神の御意志」によるものなんだけど、とった方法が最悪というか、なんかヘンな方向にいってしまった人でしたねえ。
でもその人物造詣に無理はなく、原作のカメルレンゴは相当興味深い人で、その辺もうちょっと映画で表現できなかったかなという残念さはあります。ただ、そこまで深く掘り下げるには映画じゃ限界もあって、あれで妥協するしかなかったんでしょうね。


映画で救われたのが、四人の枢機卿の最後の一人が助かったこと。
実は原作を読んだ時、彼だけは助かるのかな?と思いながら読んでて、でも結局ダメだったのがとても悲しかったので、ちょっと救われた気分でした。

実行犯もキャラが違ってましたね。殺人狂の異教徒じゃなかった。
さすがに映画であんな異教徒だとマズかったんだろうけど、無駄に人を殺す犯人じゃなかったのが違う深みを映画に与えていました。

ラングドンもアクションがかなり抑え目で(苦笑)。
まあヘリからのダイビングはこの映画では必要なかったと思います。原作のあれの重要な意味はズバリ「神のご加護」にあるので、原作より宗教色の薄くなった本作には入れなくて正解でした。
ただ、あれがなくなるとラングドンのこの事件における貢献度が低くなってしまうので、だからだと思いますね、バッジア枢機卿をラングドンが助けた設定に変えたの。
私はこの変更は好意的にとらえたいです。彼の貢献がわかりやすくなったし、前述したけど一人でも助けられて本当に良かった。

原作を読んだ時はトム・ハンクスにこのアクションが出来るのか?と怪しんでいたけど、映画ではこの事件を「ダ・ヴィンチ・コード」以後に変更していて、彼もちょっと年をとったことになっていました。前の事件を上手くストーリーに反映させていて、なぜバチカンが捜査の協力を依頼するのかとか、無理なく描けていたと思います。


とまあいろいろ感想書いたけど、一番感動したのは案外夜空に輝く爆発場面だったかもしれない。
ああいうの見たら映画化もいいなあと思える。

一番残念だったのはユアン・マクレガーのエキセントリック演技がなかったこと。
天啓を受けて半裸で笑いながら走り出す彼が見たかったなー。
あれをさせるためにユアンをキャスティングしたと思い込んでいた私は、ちょっと甘かったようです。


ほとんどローマとバチカンが舞台の、観ていて目に楽しい映画でした。でも撮影には前作同様苦労されたようで。
まあ教会がこのシリーズを忌み嫌う理由はわかるんだけど、実際いろいろしでかしてきた団体ではあるんで、いろんな思惑も甘んじて受けないといけないよねー、とは思います。




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by teri-kan | 2009-05-26 10:16 | アメリカ映画 | Comments(0)
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