フロランス・ルバッスール

「虎の牙」のヒロインで、あのルパンをして「それまでの恋愛は一時の出来心だった」とまで言わしめた女性。

一体彼女のどこがそんなにすごいのか。

解明しようと試みるも、それがなかなか手強い女性で、読者も彼女のことはいまいち把握し切れていないのが現状なのではないかと。

というわけで頑張って解明してみようと思います。
できたかどうかはわからないけれど。






ルブランは本作の恋愛を書くにあたって、敵として向かい合うルパンと女を書きたかったのだろうと思います。お互いに好意を持ちながらも「お前が犯人だ」「あなたが犯人だ」「お前が俺を殺そうとしている」「あなたが私の大事な人を死に追いやろうとしている」とそれぞれに思いこんで憎悪し合う関係を。

となるとフロランスは、本作では人柄云々よりも「犯人である」という事こそがその属性となります。犯人と疑うに足る謎めいた行動をすることが第一となり、その性格は極力わかりにくく描かれなければならない。

ようするに彼女のキャラを理解しにくくしている最大の原因は、彼女とルパンがずっと敵対関係にあるからということなんですが、とはいえルパンがなぜ彼女を好きになったのかは、彼の感情を追っていけばそれなりにわかります。

読者同様ルパンにとっても得体の知れない疑わしい女なのに、なぜ彼は彼女を好きになったのか。
その理由は、まあ「美人」である上に結局「得体が知れないから」なんですが、いろいろな意味で彼女はルパンが興味を惹く要素をたくさん持っている女性なのです。


ルパンの女性の好みって大体次のような感じなんですよね。
髪はブロンド、身持ちが良くて、身のこなしが優雅で、思慮深くて、知性があれば尚良し。プラス、謎のある女性が大好き。
そして謎でいうならフロランスはもうこれ以上ないほど謎だらけ。元々身近な秘書だった分、ルパンが悩む要素が十分なのです。

彼は女性とは事件絡みで出会うことがほとんどで、それはいつも自分から事件を作ったり首を突っ込んだりしているからなんだけど、今回は事件が巻き込まれた形のものだとしたら、彼女自体も知らないうちに「もしかして敵?でもまさか」みたいな存在になっていた。
「美人だな、いい声だな、歩き方が素敵だな」程度の好ましさしか感じていなかった秘書がいつのまにか謎だらけの女性になり、「何故」を心の中で連呼するうち、あれよあれよと心の全てを占めてしまう。

攻撃が彼の本分なのにこの事件では全てにおいて受身にならざるを得なくて、同様に彼女の振る舞いにも振り回されてばかりのルパン。
敵として退けたいのに恋心のためそれが出来ない悔しさに悶え、どうしようなく苦悩し、苦悩すればするほど彼女に一層心を囚われるという悪循環の繰り返し。

苦労させられた分執着が強いというのは、まあ、あるでしょうね。
そして最後まで尻尾を掴ませなかったフロランスの秘密主義はアッパレでもある。
あれくらい秘めるタイプの女性(なおかつ頑固)だったら、ルパンならどんどんのめり込むかもしれないとは思いますね。


私がこの二人で好きな場面は、真犯人を捕らえてとうとう素の状態で二人きりになった時の二人なんですが、すっごく気まずいんですよ(笑)。フロランスは平静を装い無言のままで、ルパンは自分の功績を誇ることもできずに黙りこくる。
いつもなら自分がどんだけ頑張ったか、どんだけ天才を発揮したかをペラペラペラペラしゃべるのに、彼女には何も言えないの。ここのルパンはえらく可愛いんですよ。

案外いい組み合わせなんじゃないかなあと思いますね、フロランスとルパン。彼女のためにルパンがいろいろ気を揉んだり慌てたりしてるのがとてもいい。
いつも女の足元に跪きながらも女を俺色に染めてしまう彼ですが、フロランスならいい距離を保った関係を作れそうな感じがします。彼らの結婚生活の幸せは、それなりに持続したんじゃないかなあ。



フロランスのその後は全く不明で、生死も定かではなく、これまでのパターンからいけば早くに死んでしまった可能性が高いんだけど、もしかしたら彼女なら円満離婚もありえたんじゃないかとさえ思います。芯の強さでいけば多くのヒロインの中でも一・二を争うほどの人だし、決断すべき時は決断できる人だと思うから。

でもそんな女性ならルパンいつまでも愛してそうだし、やっぱり死んでしまったと考える方がしっくりくるかも。なんか寂しいですが。
でも彼女が死んでドン・ルイス・ペレンナの存在も殺してしまったと考えた方がつじつまは合うような気がしますね。
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by teri-kan | 2009-06-04 10:17 | アルセーヌ・ルパン | Comments(2)
Commented by aosima0714 at 2009-06-04 10:24
訪問です。

良かったら私のブログに来てくださいね!

仲良くしてください。

これから、ちょこちょこ遊びにきます!よろしくです<m(__)m>
Commented by teri-kan at 2009-06-05 10:53
コメントありがとうございます。
気が向きましたらまたお越し下さい。
こちらこそよろしくです。
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