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クララ・モラン

「二つの微笑を持つ女」のヒロイン。通称「金髪のクララ」。
モランは母親の姓ですが、多分本人もモランさんでよいと思います。


父はプレイボーイでならした侯爵で、母はお針子時代に侯爵と関係を持ち、後に身を持ち崩してパリで水商売をして暮らしてきた女性。
男の出入りの激しい家庭環境で子供時代を過ごし、母の死後踊り子として生計を立てるもギャングのボスの囲われ者となり、そのボス同様警察に追われる身となってしまう。

彼女がルパンと出会ったのはそういう状況下にあった時で、かなり奇跡的な偶然、あるいは運命的ではあるけれど誤解の多い成り行きによって、ルパンと恋に落ちました。

ただ、非常に微妙な恋で、なんか、ちょっと、虚しいかも。






彼女についての描写を本文からいくつか拾ってみました。
「魅惑的でひとの欲情をそそる」「身のこなしは波打ち、しなやか」「肉感的で、甘ったれたあでやかさがある」

一言で言うなら、フェロモン出まくりのコケティッシュな女性といったところでしょうか。初対面の男に触れられてもきつく拒むことのできない軽いタイプで、まあなんと言いますか、「男は皆好きなんだろうな、こういう人」って感じの女性ですね。

ただルパンの恋愛対象からは微妙に外れているタイプ。
もちろん彼は美人大好きで、色っぽい女も大歓迎ですが、決して本気の対象じゃないですね。彼の好みはたやすく手を出せないような、凛とした女性のはずだから。
クララもそれは察していて、自分の姿の向こうに見ている彼の想い人に密かに嫉妬心を燃やします。それでもクララのいいところは、腹違いの妹である恋敵をきちんと認めていて、思いやってあげられること。
根が善良なんですね。基本的に優しい子なんです。

そういうところはルパンも好きだったと思います。そこまで深く恋してなかったかもしれないけど、なんだかんだで自分にベタボレの女は可愛く思っていたと思います。

でも、結構早くに飽きてしまいそうな感じがするのは、もうどうしようもない……。


ルパンがゾゾット(ゴルジュレ警部の妻)と旅行に行った時にはもう切れてたでしょうね。クララと恋愛中に彼女を放って別の女と二週間も旅行なんて出来るはずないし、そんなことをしたら感情的なクララのことです、結構な修羅場になったことでしょう。

物語のクライマックスで、ゴルジュレに言い放った「ゾゾットと二ヶ月以内に旅行に出掛ける」というルパンの台詞は、だから実はちょっと問題。あの時点でクララとの関係は二ヶ月もたないと内心考えていたということになるから。
クララの身になって考えたらかなりヒドい恋人です。この辺は女をとっかえひっかえ、あっちこっちと渡り歩いているルパンの一面がよくわかるエピソードだと思います。

でも面白いのは、実際にルパンとゾゾットが旅行に出掛けたのは三ヶ月後だったということで、当初の予定より遅れてるんですね。思いの外クララとの関係が長く続いたのか、それともクララが別れるのに同意しなくてズルズルと揉めたのか、どっちだったのかなあと考えてしまいます。 


どちらにしても別れるのに難儀しそうな女性っぽいので、その点ルパンは苦労しそう(苦笑)。
ルパンの多くの恋人の中でも聞き分けは一番悪そう……というか、耐えて身を引くとか出来なさそうな、そんな女性だと思います。
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by teri-kan | 2009-07-23 11:23 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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