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カトリーヌ・モンテシュー

「バール・イ・ヴァ荘」のヒロイン。
ルパンに事件調査の依頼に来た女性で、美人姉妹の妹の方。

登場の仕方が、ちょっと変わっています。






深夜、観劇帰りのルパンが玄関の鏡の前でナルシストぶりを発揮した後に、部屋に潜んでいた女性を発見するといった場面から始まるこの物語。映画やドラマにでもなりそうな情景なんですが、やっぱり男としては嬉しいものなんでしょうか、夜中に若い美人が部屋に入り込んでいるということは(苦笑)。

ストーカーか、はたまたグルーピーか。ルパンなら女泥棒もありえる。どちらにしても現代の感覚では薄気味悪い不法侵入者で、彼のような余裕は決して持てませんね。

もちろんルパンは自分に自信満々の男なので、陽気に彼女を歓迎し、遠慮なく手を出そうとします。彼女はそれを拒否しつつ訪問の目的を語るのですが、かなり無理があるんですよね、これ。
カトリーヌ、切羽詰っていたとはいえ、よくまあこんな手段に出たものだなあと感心します。もしルパンが女に飢えた、がっつくタイプの男だったらどうするつもりだったのでしょう。ベシューの話だけでルパンを訪ねたというのなら、ベシューのルパンへの心酔度がよほど彼女には高く見えたのでしょうね。


初日のルパンが紳士だった上、事件解決に突き進む彼の姿は頼もしさ抜群で、カトリーヌがルパンに恋するのはあっという間だったと思います。
もともと「出会う前から恋に落ちる準備は出来ていた」と言ってもいいくらいルパンに信頼を寄せていたカトリーヌ。婚約者はいたけれど、信頼度ではもう圧倒的にルパンの方が高くて、実はこれだけでもう一つお話ができそうなんですよね。彼氏よりも男友達の方に相談事をして、なんだか変な三角関係に発展してしまうというありがちなお話が。

というわけで、婚約者が出てくれば本作はもっと面白い話になったんじゃないかと思います。そうすればルパンのカトリーヌに対する情熱も見られたかもしれません。


本作の三角関係の相手はカトリーヌとベルトランドで、ルパンにはウハウハの展開になるんだけど、そのせいでルパンはなんか余裕で、そしてカトリーヌにとっては、まさか姉が恋のライバルになるなんて思ってもなかったことでしょう。
彼女とベルトランドはそうとは意識せずルパンをめぐって言い合いしたそうですが、本文中に詳しい描写はなく、実はカトリーヌとルパンの交流は案外浅い。いつもの「事件に深く入り込むと共に女性との関係も深めていく」というやり方が、本作ではどうもあまり見られないのです。

その理由は、ホームズのように調査を依頼されたからにはまず仕事をキッチリやろうと、姉妹の身の安全を第一に考えていたから、なんだろうけど、途中からはカトリーヌといい仲になりたいと思っても、お姉さんがすぐ側にいる手前うかうかと手を出すわけにもいかなかった、というのがあったと思います。

どちらにしろ、いつものルパンの情熱を知ってる人間からすると、ちょっと薄いなあと感じてしまうのは確か。
やはりお姉さんと分散されてしまったかなあ、ルパンの心。
結果的にルパンと恋仲にならなくて彼女には良かったと思うのだけど、淡い感じで終わってしまった分こちらにも淡い印象しか残らなかったのがちょっと残念でした。
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by teri-kan | 2009-08-06 11:18 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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