「007 消されたライセンス」(1989)
2010年 04月 28日
初めて国家の命令でないボンドの活動が描かれた「007」映画です。
非常に見返すのに気がすすまない作品。「007」のくせに残虐なシーンが多くて、アメリカで初のR指定になったというのも納得です。復讐劇のためユーモアも皆無で、なごめるシーンはQが出てくるところくらい。彼の登場が唯一「007」らしさを漂わせているといっても過言ではありません。
今回の敵は中南米の麻薬王。とても冷酷非情な男で、まあその非情さが身を滅ぼすきっかけになってしまうわけだけど、見ていて気分のいい敵ではないですね。ある意味リアリティがありすぎる。
ボンドの戦い自体は素晴らしくて、復讐モノにつきものの重苦しさを抱えているとはいえ、普通のアクションスパイ映画としてみたら全く文句ない。非常によく出来た作品です。
アクションも面白い。特にクライマックスのタンクローリーチェイスシーンは圧巻。
出来栄え自体は私もとても良いと思います。
でも後味の悪さはいかんともしがたい。
そこのところをちょっと書いておきます。(ネタばれ大有りです。)
やっぱり何にひっかかるといって、サンチェス一派がフェリックスの妻を殺したことですよ。
残酷なシーンだけなら別に他にもある。サメ池に下半身を浸けられたりとか、気圧を急激に変えられて顔が破裂したりとか、デル・トロなんて足先から徐々に細切れにされちゃってさ、痛いのが苦手な私にとっては「うへえ」とか「ギョエエ」とか叫ばずにはいられない場面だらけ。
でも一番精神的にくるのはフェリックスの奥さん。
だってあんな風に殺さなくたって……。彼女は何もしていないのに。
同じく結婚式直後に殺されたボンドの妻は、可哀想だったけどそれでもなんとか納得はできた。ボンドと同様、彼女の父親は敵にとって仇敵だし、彼女自身も逃亡するボンドを助けたりとか、敵と真っ向から対立した。だから仮にボンドを狙った銃弾に倒れたとしても、純然たる巻き添えじゃないとなんとか思える。
でもフェリックスの妻は本当に何もしてないんですよ。
だからもう可哀想でね。
やられたのがフェリックス当人だけなら、あんな仕事してるからしょうがないし、たとえ片足を失っても、妻に介護されてそれなりの後半生を送れたのになあとか思ったりします。
まあそうなったらボンドが復讐に走らないという、この映画にとって根本的な問題が発生するんだけど、でも「007」シリーズはそれでいいんだと思う。余計な重さはいらないんですよ。
だから本作は異色中の異色。
ロジャー・ムーアのボンドはそのソフトさとユーモアで多くの女性ファンを獲得して、でも一部(の男性?)からは「ふざけすぎたB級スパイ映画」みたいな言われ方をしてたと思うけど、ティモシー・ダルトン版は明らかにその反動がきてますね。特にこの「消されたライセンス」は。
でもね、「リビング・デイライツ」はよかったけど、これはいけない。フェリックスの妻のあれはダメです。
他の映画ならいいよ。でも「007」じゃダメ。
殺される理由がもうちょっと、別のものだったら……。
うーん、どちらにしてもダメかな。
いいかげん「リビング・デイライツ」が真面目だったのに、真面目を通り過ぎて非常に重苦しくなってしまったからね。
やっぱり「007」としては問題の多い作品だと思います。
>クライマックスのタンクローリーチェイスシーン
爆発した炎が人の手の形・・・。
>やっぱり何にひっかかるといって、サンチェス一派がフェリックスの妻を殺したことですよ。
本当に酷かったです!
>ジョー・ドン・ベイカー
>さっそく調べてみたら、なんとCIAの人になってたんですね。なんという華麗な転身。
そこがまた役者!
>そういうところに目をとめるところがさすがです。
僕は典型的なオタクですから(笑)
>ストレスためない程度に頑張って下さい!
ありがとうございます。
>爆発した炎が人の手の形・・・。
え!それは見なければ!
……と思うものの、やっぱり気がすすまない作品なんですよね。
ホントに辛いお話です。
>典型的なオタク
007はオタク心をくすぐるんでしょうね。
私は単純に「あーおもしろかった」で終わってしまうのですが、小物一つでも目にとめる方はとめてますもんね。
そういうのホントにすごいなあと思ってます。
「007消されたライセンス 悪魔の手」でGoogle画像検索すると出て来ます。
>007はオタク心をくすぐるんでしょうね。
そうです。だからこそ「ダイヤモンドは永遠に」や「黄金銃を持つ男」のような作品に愛着を感じます(笑)。
>中南米の麻薬王。とても冷酷非情な男
双葉十三郎先生は「二流程度の殺し屋にしか見えない」と著作に書いています。団しん也さんに似てる?
月曜日終了。ホッとしました・・・。激務!
>悪魔の手
見ました! ホントに手でした!
特殊効果じゃないんですよね?
いやだ恐い(笑)。
この画像有名だったんですねー。
「007 手」だけでも出てきました。
この映画自体がいろいろ呪われていたのも初めて知りました。
過去最低の興行成績だったというのは、うん、まあ、そうでしょうね。
>「二流程度の殺し屋にしか見えない」
なんとなくわかります。
似てると言われたら団しん也も複雑だと思うのですが(苦笑)、団しん也を思いっきり悪人顔にしたらあんな感じになるでしょうか。
いやー、ホント、残酷な人でした。
>激務!
毎日ご苦労様です!
映画公開当時。雑誌等で随分話題になりました。
>過去最低の興行成績
鮫に足を食いちぎられる、減圧室での頭部破裂、粉砕機での圧死・・・etc.残酷な場面が多過ぎです。
ボンドガールのキャリー・ローウェル(リチャード・ギアの元奥さん)は、ちょっと素敵でしたけど。
余分な話ですが・・・。
僕がこの作品を映画館で見に行った時の事です。
映画が始まる前にスクリーンで他の作品等の宣伝。
まだ数分は「消されたライセンス」は始まらないだろうと思って僕はトイレに。
しかし座席に戻ったら、映画は既に始まっていた・・・(悔しい!)。そう意味でも呪われた映画でした・・・(苦笑)。
話題になってたんですねー。
うん、確かにあれは大騒ぎされて当然かも。
>残酷な場面が多過ぎです。
ホントそうなんですよ。
ロジャー・ムーアの「女子供でも楽しめる愉快なボンド」が懐かしくなるくらいですよ。
あの頃ああいった残酷な映画が流行ってましたっけ?
SFが流行ったらSF風007、って感じに、007って思いっきり流行に乗っかるので、ああいう残酷さが流行ってた時期だったのかなあと、ちょっと考えてしまいます。
今から振り返ってもやっぱり異常な007作品だったですよね。
>映画は既に始まっていた・・・(悔しい!)
それははっきりと呪われていた映画なのだと思います(苦笑)。