「僕等がいた」その2

このマンガは高校生の高橋七美とクラスメイトの矢野元晴、この二人の恋愛関係を描いた物語で、ストーリーは全て矢野を中心にして進んでいきます。
それは彼が人を惹きつける大変魅力的な男の子だからなんだけど、外見だけでなく中身のカッコよさが彼はクセモノで、いかにもこういう男に女は惹かれるよねって感じの子なんですよ。

というわけで、矢野と女の話。
「過去に他の女と大恋愛した男と恋愛するのは大変だよね」の前半から、「最初から最後まで女の浅ましさの呪縛の中で生きてるんだね」って感じの後半まで、矢野を、というか矢野を取り巻く女達を考えてみたいと思います。







「は?」って言われるかもしれないけど、11巻の矢野の認知云々のくだり(父親との関係を具体的に母親が矢野に話すところ)を読んでいて、私は「ハリー・ポッター」のヴォルデモートを思い出したのでした。ていうかヴォルデモートの母・メローピーを。
私はメローピー大嫌いなんだけど、あの女の浅ましさと矢野の母親の問題はかなり似てるように感じたのです。(メローピーについてはこちら

認知してもらえるはずもない子供を女の欲のみで生んで、幸か不幸か子供は美男の父親にそっくり。母親は強いコンプレックスを抱えた女で、自分の存在意義を憧れた男の子供を持つことによって求め、しかも矢野の母親は男そっくりの我が子をかつて手に入れられなかったものの代替品のようにして愛した。

言うなれば子供を認知してもらいたかったのではなく、子供を生んだ自分を認めてもらいたかっただけの女です。しかも自分とその男との寒い関係を愚痴交じりに息子に語って聞かせる母親。
でもこんな女でも矢野にとっては血を分けた大事な母親。矢野の葛藤は、ちょっと私の想像を超えるところにあって、さぞかししんどかったろうと推測するしかできません。

子供にとって自分が望まれて生まれてきたのかどうかは非常に大きな問題で、特に私生児として周囲にからかわれてきた子ならば、その悩みはずっと自分の中に存在していたでしょう。そしてそれを気にし続ける矢野に対して、おそらく母親は「欲しかったから生んだのだ」と、彼が子供の頃からずっと言い聞かせてきたことでしょう。
確かにそれは間違いじゃない。間違いじゃないけど、11巻の母親の台詞は同じ「欲しい」にしても大問題です。

「避妊に失敗しちゃった。でも愛し合って出来た子だから産んだんだよ。たとえ不倫でもね」
と言われた方がはるかに救われるような気がするのは気のせいではないでしょう。
「気紛れで抱いてもらった。でも相手を騙して(←多分)妊娠した。だから認知してもらえなかった」
……これはやっぱり複雑な気分になる。子供としては一体どう受け止めればいいのか。
いっそのこと「精子バンクから精子を提供してもらって産んだ。だってどうしても自分の子供が欲しかったんだもん」と言われた方がはるかに望まれて生まれてきたような気がしたりする。

要するにそこに愛があるのかどうかなんですよね。愛の形は様々としても、愛がなけりゃ結局人は幸せにはなれない。男女の愛にしろ母のみの愛にしろ、愛の結果として子供が生まれたならば、その子がいる限り母親である当人は幸せであるはずなんです。
しかし目の前の母親は病気という事を差し引いても全然幸せそうじゃない。自分の死後一人になってしまう息子の行く末を心配するどころか、自分の喪失感ばかりを気にする。

矢野としては母親がどんなつもりで産んだかなんて今更とやかく言うつもりはないでしょう。しかしそのことによって母は幸せになれたのかどうか、それは大きな問題だったと思う。
で、結局「幸せじゃないじゃないか」っていうのが、彼にとって最も辛かったことではないか。
結局愛はなかったんじゃないかということが。男の側だけになかったわけではないということが。

自分という存在が母の心を愛で満たすものではないというのをわからされてしまう子供の心って一体どんなものか。
病気で心が弱っていたとはいえ何故あんな告白を息子に対してしたのか、個人的にちょっと許せないですね。最後の最後にあんな方法で矢野に真実を突きつけたことにも腹が立つ。
ああもうホントに、ホントにホントのバカ女ですよ。
それでも彼女は母親で、死してなお矢野の母親で、全く、なんでこう矢野の周りにはバカ女ばかり集まるのか。
バカはバカでも母親と奈々は真逆のバカで、そりゃ矢野は奈々に惹かれたでしょうよ。そして山本をほっとけなかったでしょうよ。
山本はね、ありゃ矢野の母親そのものの女だ。だから矢野は山本を永遠に無視できない。



むう、なんか長くなりそう。
まさか「僕等がいた」でこんなに長々書いてしまうようになるとは。

現在の矢野の問題、それをふまえた上での彼を救う方法については、とりあえず次回に回します。



(続く)
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by teri-kan | 2010-09-21 01:05 | 漫画 | Comments(0)
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