「華麗なる賭け」(1968)

超金持ちの実業家でありながら大掛かりな銀行強盗の黒幕という男にスティーブ・マックイーン、保険調査員で犯人を早くから彼だと見抜いた女にフェイ・ダナウェイ。
二人の駆け引き、関係性の変化が大変スリリングな、まさしく華麗な大人の物語です。

スティーブ・マックイーンの笑った顔がキュートすぎて困る作品。まさかこんなチャーミングな男だとは思わなかった。彼に注目して観れば本当にとことん楽しめる映画で、ちょっと冗長かなと思われる場面でも、表情や行動の意味を探しながら観たら全然飽きることはありません。





マックイーン扮する男は、グライダーを操縦して、乗馬(ポロ)が巧みで、車の運転も上手で、ビジネスではお金も思うように増やして、人間さえも操ってパーフェクトな銀行強盗をあっさり成功させてみせるような人物。自身の肉体でも頭脳でも、操りたいと思うものを存分に操ることに楽しみを見出す人で、しかもその先にある制御不能の状態に憧れているふしさえある。
どこか怒りに近いものを抱えて、常に孤独の中にいて、微笑の裏に破滅願望すら見え隠れする危うい人で、しかしどうひっくり返してもつけ入る隙が全く見当たらない、見事に自己完結してる男。

フェイ・ダナウェイが彼に目を止め、結局惚れてしまったのも無理ない。深入りするつもりないのにのめりこんでいく様はこっちも「あああああぁぁぁ」って感じだったけど、むしろ彼女は頑張った方だと思うんだ。自分の感情はどうあれ逮捕させようとしたわけだし、プロフェッショナルであり続けようとはしたんだよ。
でも最後のあれはねえ……私が彼女の立場でも泣くな。その場に突っ伏して号泣かも。
彼が逃げた安心感と、してやられたという妙に爽やかな気持ちと、騙された悲しさと、自分を信頼してるようにみえて全然してなかったことと、しかし愛は紛れもなく愛であることと、なにもかもがごっちゃになって、もう泣くしかない。

彼が言ってた「葬式」とは、多分彼らの恋のお葬式のことですね。マックイーンがあの場に行かなかったということはそういうことで、でもそこまでしてなお彼女に選択肢を与えてる。
なんていうかなあ、あの最後のメッセージはほとんど悪魔。あの要求は考えれば考えるほど恐ろしいですよ。

とことん孤独な男なんですね。愛する女にさえああしか出来ないなんて。
試す、というより、自分の想定内の範囲で物事を完結させたいっていう方が正しいのかな。究極的に女も馬も車も彼にとっては同じもののような気がするな。
でも簡単に操れるような女だったら、彼は彼女をたいして愛さなかったような気がするし、二度目の銀行強盗にしたって、強盗行為自体にはもうたいして興奮してないよね。興味があったのはフェイ・ダナウェイの行動であり決断であり、そこだけに刺激を感じてたように思う。

うーん、本当に寂しい男です。
劇中で流れる陽気な音楽も今となってはかえって孤独に聞こえてしょうがない。満たされてないのに殺伐としてない分本当に孤独だ。

唯一翻弄されて可愛らしかったのはチェスのシーンかな。
チェスの盤面でも、男対女の部分でも、完全に押されちゃってたところは面白かった。
いやもうセクシーすぎて参った。臨界点に達するまでのマックイーンの表情や動きは最高でした。



最終的な駆け引きに勝ったのはマックイーンの方。フェイ・ダナウェイを見事泣かせたし。
でもそれが彼の本意だったかどうかはわからない。
彼の心は底知れなくて、考えても考えてもつかめるものがありませんね。
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by teri-kan | 2010-11-17 01:21 | アメリカ映画 | Comments(0)
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