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政治 VS 宗教

去年NHK-BSでやってたイギリスのドラマ「大聖堂」と大河ドラマ「平清盛」は舞台となっている年代がほぼ同じ。
どちらも権力を持った坊主が出てきて政治が宗教に振り回されるんだけど、「大聖堂」のように両者がガッシリ結びついているのと比較すると、対立している分まだ「平清盛」(というか日本)はマシかなあと思います。

仏教勢力の強かった奈良の都を捨てた桓武天皇がえらかったってことなんでしょうが、でも桓武天皇は怨霊に随分苦しめられましたからねえ。
どうしても心を救う何かは必要だし、となると宗教を完全に捨てるなんてこと人間には出来ない。でもその信心につけ込んで脅すようなやり方は最低で、「はむかったら神罰が下るんだぜいっ」とエラソーに神輿担いでる僧兵達には、「ええかげんにせーよ」って感じでした。



そんな神輿に矢を放った清盛、というのが今回のドラマのキーポイントなのですが、とても面白い回だったんだけど、惜しむらくはそこに至るまでの清盛の心理描写が薄いってことで、どういうつもりで射ったのか、どれほどの覚悟があったのか、イマイチ伝わってこないんですよね。
おそらく「あまり深くは考えていない」というのが正しいのでしょうが(深く考えたら射ることはできないだろう)、それならそれでカンで生きる清盛をもう少し上手に描いてくれないかなあと思います。
結果的にそれが上手く回って出世して行くのならば、彼の描写の仕方にもうちょっと工夫があってもいいんじゃないかな。

まあ矢を射った清盛の中身は正体不明でも、それによって引き起こされる周囲の人間の心理についてはかなり上手く描けていて、今週はそこを楽しむべきですね。
鳥羽院、父・忠盛、平家内部、源氏一党、摂関家親子、院近臣、一気に人間関係がクリアになって、ワクワク度がかなり上がってきました。
特に鳥羽院と忠盛の過去の挫折と現在の感情についてはなかなか上手く出来ているなあと。
なぜ忠盛が清盛にこだわっていたのかも明らかにされたし、鳥羽院の長年の苦悩もなるほどなあって感じでした。

既存勢力と言うには強大すぎるんですよね、白河院の敷いた院政も比叡山も。
社会の基盤、当時の日本を成り立たせている根本と言っても過言ではなくて、それに風穴を開けるというのは並の人間にはできないんだ。でも清盛はなんか違うぞ?というのが今回のお話のテーマで、なんていうかなあ、舞子にその萌芽を見出した忠盛は武家の人間だから良いとして、鳥羽院がそれをありがたがるというのは、あらゆる面から見てヤバすぎるというか、体制維持を考えてもやっちゃいけんことだろーとは思います。
清盛を流罪に追い込めなかった頼長の涙は重いですよ。もしかしたら崩壊の足音が彼には聞こえていたかもしれないな。



鳥羽院は保元の乱の原因というよりも王家の腐敗の象徴というよりも、腐ってる時代そのものなんですね。平安末期のあらゆる矛盾をその身に抱えた人なんだ。
とんでもない難役ですが、三上博史がこれまたとんでもなく上手くて、よくまああんなトンデモ場面にも意味を持たせてくれたものだと大感心です。

で、鳥羽院の存在がどれだけすごいかを説明するためにも、ちょっとそれまでの日本の歴史を冒頭で説明してくれんかなと思います。
平安京遷都から約350年、大化の改新から数えたとしたら500年、それだけの期間続いた政治体制がここに来て生み出したのが鳥羽院ですよ。「朕を射てみよ」って言っちゃう人ですよ。
これって相当すごいことなんだけど、多分あまり世間的にはすごいと思われてないよね?
いや、両手広げた鳥羽院にエア弓矢を放つ清盛、という図には違う意味で「すごい(プッ」って思われてそうだけど、確かにそれもすごいがその中身も実はすごいんだけどなあ(涙)。



何を伝えたいのかはものすごくわかるんだけど、その表現の仕方がね、なんだかね。
絶対的に万人向けじゃないところが悲しすぎてもどかしいです。

気概は買うんだけどなあ。
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by teri-kan | 2012-04-03 11:55 | 大河ドラマ | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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