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歴史は歴史、ドラマはドラマ

先週、まんまと頼長に踊らされた家盛。
苦しんで、幼き日を懐かしんで、失意のうちに命を落とした家盛。
そんな家盛を惜しむシーンから始まった今週の「平清盛」は、やたら登場人物の多い回で、それぞれに言いたいことはいろいろあるのだけど、とりあえず見終わって最も印象に残っているのがこのお方。

よーりーなーがーーーーー。

サイテー、あんたサイテー。
忠盛をいびって暗い喜びをたたえる目、酷い言葉を吐くことを至上の喜びとしているかのような口は、もう爬虫類だよ爬虫類。
ヘビ? トカゲ? なんでもいいけど、白いヌメヌメ感がたまらんわ、頼長。
山本耕史、よくこの役を引き受けてくれた。
キャスティングした人も、ありがとう!

頼長は悔しいんだろうなあ。
家盛が死んでも生きててもどっちでも構わなかったろうけど、死んだことで平家がしおしおとしてくれれば万々歳だったのに、忠盛も清盛も仕事に邁進して、気がつけばなぜか公卿寸前。
なんでこう上手くいかないんだキイィィィィーー!と思ってるのは明白なんだよね。

彼が他人をいびればいびるほど、オレの言うこと聞けよ、摂関家なんだぞ、左大臣なんだぞ、エライのはオレなんだぞコラ、という本心が透けてきて、彼の器の限界まで見えてくるところが面白いです。
結構小者なんだよね。今後を想像するに、彼はこれからますます他者への嫌味と侮蔑を垂れ流して生きていくのではないかな。

そんな左大臣様(今回出世しました)に死んだ息子を侮辱された忠盛ですが、よくあそこで立ち上がっただけで済みました。打たれ慣れているとはいえ、あれは父親にはキツかったでしょう。
しかし、「ボクと家盛はデキてたんだぜ」発言を聞いて驚いた忠盛はどう解釈すべきか。
現実の院政期を考えるなら、頼長に重用されるということは体の関係アリでしかありえないので、忠盛が驚くにはあたらないし、それを言うなら忠盛だって……って話になる。
でもこのドラマではそういった権力闘争と男色のセットは一般的ではないらしく、平家に楔を打ち込むために家盛をタラしこむというやり方は、それはそれは卑怯で滅多に見られない手段といった風に描かれているのです。
言ってみれば、頼長があの時代の唯一のホモのような描写になっているのですよ。
卑怯な唯一のホモ、といった描写に。

ドラマ的には面白いからいいんだけど、現実の頼長さんにしてみれば、「ちょっ、それっ、違っ」って感じじゃなかろーか。「他の皆もやってたじゃないかー」じゃなかろーか。
もしかしたら今頃「あんな日記書くんじゃなかった」とか思ってませんかねえ。
いや、むしろ21世紀まで自分の日記が散逸せずに残っていることに驚いてるかも。ていうか、やはり日記が残ってることを誇りに思ってそうだ。
……と考えるなら、うん、まあいいか、日記から想像を膨らませて頼長のキャラを今風に描くのも。唯一のホモでも、嫌味垂れ流しの小者でも。彼の無念に今の人間が思いをはせるなら、有名になった理由がアレでも頑張って生きた甲斐があったというものだし。
……と思ってあの世から見ててくれないかな。
ま、摂関家自体は何をどうしたってダメダメだけどねー。



宗子を救ったのが丹精尽くした曼荼羅だったというのは良かったと思います。
大きな仏様、美しい仏様、美しい景色、美しい花、普段見られないそういったものを目にした時、人の心は一瞬でも無になったり透明になったりすると思うのですが、その一瞬が悲しみに支配されている人の身には救いだったりします。
曼荼羅の仏様に家盛を見ることができて宗子には良かったです。
宗子は本当に本当に苦しかったと思うのでね。

そして、とうとう毛のない西行登場。
彼が清盛に与えたアドバイスは、平家一門内の清盛のはみ出し具合を理解できているからこそで、それは西行が都システムから出てみないとわからなかったことかもしれません。
都人でありながらシステムに属さない出家人だからこそ、平家の人間でありながら血のつながらない清盛の出来ること出来ないこともわかるのでしょう。
朝廷や都社会を傍観者として見ることができている西行というのも、彼のアドバイスからは感じられました。
西行の存在は今後ドラマでかなり重要になりそうですね。

にしても、鳥羽院だの信西だの明雲だの、ここんとこ肉や魚の匂いがしてきそうな濃い坊主ばかりを見てたので、西行の爽やかぶりはなんとも心地良いです。
西行は髪を剃って普通に軽くなってますもんねえ。剃ってますます野心の釜をかき混ぜてる人達とは全然違います。
今回登場した絵師のお坊さんと歌人の西行。
芸術に身を置く出家者は、この政治劇の中では手を合わせたくなるようなありがたさですね。

政治や社会とかけ離れた場所で二人ぼっちでいる崇徳院と後白河もいい感じでした。
出家したわけじゃないのに世の中に見捨てられたお二人です。
和歌の好きな兄院と、今様狂いの弟宮。
悪いコンビじゃないのに……これから先を思うと世の中って恐ろしい。
兄弟って難しいな。

この時代、ホントに混沌としてるんですよね。
歴史って結果でしかないんだと思うと、混沌の中で生きてる人達には誰にでもガンバレのエールを送りたくなります。
来週も皆さんには頑張ってもらいたいものです。
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by teri-kan | 2012-04-16 16:25 | 大河ドラマ | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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