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乱の前夜の源と平

大河ドラマ「平清盛」、とうとう保元の乱の直前まで来ました。
上皇と帝の対立、摂関家内の対立、そういった朝廷の権力争いは先週でほぼ説明終了、今週はそれに振り回される武家のお家事情が描かれました。

まずは俄然ヤル気の源氏一族。
為義も義朝も、貴族の下どころか平家の下にも甘んじている今の地位をなんとかせんと、はりきって鎧装束を身にまといます。
個人の能力の違い、棟梁と息子という立場の違い、それぞれの違いが道を分けてしまった為義親子ですが、父も子も掲げる理想や目標は同じところにあるわけで、敵味方に分かれた悲劇がそこはかとなく両者の表情から漂ってきます。

源氏の人達って、一族の目標に向かってそれぞれがそれぞれの思うままに振る舞い、己の力のみで結果を出していくって感じの人達ですね。一族内の競争で勝ち切った者が棟梁となり、より強い遺伝子が次に残ればそれでよいといった感じで、なんつーか、原始的というか動物的というか、京のお公家さん達はこういうの嫌いだろうなあと思わずにはいられない野蛮さです。

でもこういうのが最後に頂点取るんだな……。
最終的にふさわしい一族の終焉を迎えるにしても。

鎌田親子がよいですね。特に父は父の愛が深いです。
由良御前もさすが本妻。愛とやすらぎがあればOKの常磐とは心構えが違います。
義朝の周辺、決して悪くないんだよね。父親や兄弟とは残念だったけど。



平家は源氏ほど単純じゃないのが難しくもあり面白くもある。
清盛のあほぼん時代をあっち行ったりこっち行ったり描いてきたのも意味があったかなあと思えるくらい、平家内部はそれぞれの本音と建前と思惑が微妙すぎる。

よくまあこの微妙感をドラマでそれらしく表現できているものだと思います。
それぞれに個人の思いがあり、皆それを平家一門の表情の下におさめているけれど、そのおさめ方もやはりそれぞれで、一門勢揃いのあの場に漂う微妙なモヤモヤ感は見ていてなんとも言えん。
なんていうかなあ……源氏の方が一族内で殺し合い奪い合いしてるのに、あっちの方がなぜか団結しているように見えるんだよね。
それは一人一人のやり方はどうであれ、一族の目標が遺伝子レベルで共有できているからなんだろうけど、翻って平氏はね、なんか、どうにも、微妙なんですよ。

まあ清盛の血筋が違うからといえばそうなんだけど、そうであるからかどうなのか、他の平家の人達と清盛の見ているところって、もう全然違うんだよね。元々の人間の造りが違うとしかいいようがないほど、同じものを見ていても目に映ってるものが違うんだ。

今回とうとう頼盛がそんな違いに「我慢ならん!」とばかりにキレてしまったのだけど、このドラマの上手くて且つ問題なところは、「その頼盛の気持ち、わかるわー」と見ている人間が思ってしまうところで、大河ドラマの主人公の立場がこれでいいんだろーかという、いつもの視聴率問題に行き着いてしまうところなんですよね。

個人的にはこの微妙な平家のモヤモヤ感はいいと思うんですけどねえ。
源氏との対比のさせ方も上手いと思うんだけど。

平家がそんな雰囲気なのは、清盛を筆頭に平家の人達が一面的な人間に造形されてないからですが、そういった人間の描き方という点では叔父・忠正が大変興味深いですね。
清盛を嫌いだけど嫌いじゃない、許せないけど許せる、合わないけど必要だと感じる、認めるけど許しがたいところもある……等等、人間って裏表の感情と理性と打算と良心と諦めと志と、様々なものが組み合わさって出来てる生き物で、それは重ねた年齢によって深みや重さも違ってくるし、忠正の思慮と頼盛の浅慮の対比は、今後のことを考えてもなかなか良かったと思います。

この忠正像は、下手すりゃ清盛中心のドラマを作るための都合のいい人物像になりかねなかったところですが、なんとか上手くここまできたように思います。
清盛と対立する人が一面的な人でなくて良かった。
池禅尼のキャラクターと合わせて、平家に漂う微妙なモヤモヤ感を上手く作ってくれたと思います。
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by teri-kan | 2012-05-21 16:26 | 大河ドラマ | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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