日本人の線路と道路

長く暗いトンネルを抜けたら、そこにあった道は崩れてなくなっていました、か。

比喩でも暗喩でもない、現実として目の前にその光景が広がっている。
東京に続く道が見るも無残になくなっちゃってる。

この脚本、ほんとユイちゃんに対して鬼だな。



モータリゼーションを毛嫌いし、東京で臨機応変に動く正宗さんの車に敗北感を抱いた大吉さんって、ものすごく重要な役だったんですねえ。
鉄道は一本道であるがゆえに一箇所でも壊れてしまったらそれだけでもう目的地には辿り着けない。
それはどこか夢への道筋と重なるところがあって、それこそ昔は地方から東京へ行くためには列車を使うしかありませんでした。
都会が夢の象徴なら、列車は夢に近づける唯一の手段。
夢と列車の関係は切っても切れないものでした。

現在はもう都会への道は列車だけじゃないです。
正宗さんは自分のタクシーで北三陸-東京間を往復したし、震災のせいでしばらくは困難を極めるだろうけど車なら東京に出られるし、今の時代ユイちゃんが物理的に東京に行けないってことはない。
でも目の前で線路が寸断されてしまうというのはね、断たれた夢の象徴としてこれ以上のものはないですね。



先日読んだ「縄文人に学ぶ」に書いてあったことがじわじわと身に沁みてきます。
なぜ縄文時代は大規模な発展をせず、一万年間も同じ生活様式が続いたのか。
その理由は日本の地形にあるということが書かれているのですが、今も日本人はその地形に良くも悪くも生き方や価値観を決められているなと、ドラマの崩れた線路を見て思いました。

大小様々な山に囲まれ、人が住めるのはその合間の僅かな平地だけ。山は簡単には越えられず、昔は小さな集落でこじんまりと生活していくしかありませんでした。
今は道路が整備され、峠を越える道の多くも綺麗に舗装されています。それこそトンネルが出来れば何十分何時間とかかってた隣の村だって数分で行くことができます。
でもそんな現代だってひとたび集中豪雨でも起これば簡単に集落は孤立、縄文時代となんら変わらない状況に置かれてしまう。

昔流行った「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」とか、リニア開発を見て「日本より広いアメリカとかに必要だろ」とか、速く移動できる道路や線路は日本には不必要だという意見がたまに出たりしますが、日本人の速く移動するための道路や線路への思い入れは広さ狭さが問題じゃないんですね。狭いのに狭い利点が全くない地形、生活圏をこまごまと山に寸断され、隣村に行くのでさえ長時間を必要とする難儀な国土ということから来てるんだと思います。

道は未知への憧れをかきたてるものと、それこそ縄文時代から決まってるんですよ、日本では。
逆にアメリカなんかは道がなくても移動できるし前へ進める。
西部開拓者なんて原野をただまっすぐ西へ向かって馬車を走らせただけです。
でも日本は道を作らなきゃ前へは進めない。夢の実現のためにはまず道ありきです。
だから災害で寸断された鉄道はなんとしてもつなげなきゃならないし、つながらない部分があるならつながってるところだけでも走らせなきゃいけない
鉄道が生きてるということは人が生きて生活してることと同じなんですね。
それは原爆投下後早々に路面電車を走らせたことともつながってるんじゃないかと思います。



道を目の前で断ち切られたユイちゃんのショックは震災のショックと合わせて二重に深いです。
ツイてないですね。
ホントに鬼だと思います、この脚本。
でも上手いですよね。
鉄道の大吉さんと車の正宗さんで日本の道事情を初回からコツコツと仕込み、ユイちゃんの夢と震災の二つで「道」が日本人の精神性まで影響を及ぼしていることを語る。

上手く作ってるなあと感心します。
上手いんだからユイちゃんにもいい未来をよろしく!って言いたいです。
震災のせいで田舎から出られなかった子、田舎へ戻りたい子。
どうかアキとユイちゃんのこれからの道が希望に満ちたものでありますように。

ホントにそこんとこどうかよろしく!
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by teri-kan | 2013-09-03 14:38 | 朝ドラ | Comments(0)
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