「綱渡りのドロテ」

モーリス・ルブラン作。

アルセーヌ・ルパンは登場しないけどルパンシリーズにくっついて出版されていた作品。
本作で出てくるお宝がルパンの作品中でも触れられていることからそういう扱いになっていたのですが、内容は完全にルパンものとは別です。

主人公は女性(というか女の子って感じ)で、彼女は誰の助けも借りずに独力で敵と戦います。男に守られたり庇護されたりとか、そんなことは全くなく、自分の知恵と勇気と行動力だけで危機を乗り越えます。
だからルパン的ヒーローはお呼びじゃない。
むしろルパンは彼女で、先を読む力と決断力はアッパレなほど。
作中に出てくる頼りにならない男達が皆彼女の信奉者になるけれど、それも納得というほどこの主人公は圧倒的オーラを放っているのです。
だからまったくもってルパンはお呼びじゃない。
あんなのが作中に二人もいたらかえって暑苦しいかも。



子供時代に読んだポプラ社版のタイトルは「妖魔と女探偵」、偕成社版は「女探偵ドロテ」なのですが、原題は今回読んだ創元推理文庫の「綱渡りのドロテ」に近くて、「綱渡りの踊り子ドロテ」です。
こっちの方が断然本書の中身を言い表してて良いタイトルですね。
ドロテはタイトルになるのも当然なくらい綱渡りが得意なのですが、そんなことより何より彼女の生き方が綱渡り、取る行動選ぶ行動がことごとく綱渡り的で、一瞬でもバランスを間違えたら、あるいは集中が切れたら、そこで全てが終わってしまうくらい危うい綱を渡り続けるのです。
それは彼女のこれまでの人生に裏打ちされた自信と実力があってこそで、別に無謀な博打に挑んでるのではないんだけど、読んでるこっちはドキドキハラハラ、実際ドロテは危機に何度も陥ってるし、まさに「綱渡りのドロテ」なんですよねえ。

サーカス団をやってるってのがこれまた素晴らしくて、馬車一つで町から町へと渡る生活してるもんだから、基本的に腰が軽いんですね。当時の女性にしてはフットワークが軽すぎで、思いついたら即行動、自由気ままにあちこち駆け回るのです。
これで良いとこの出身っていうのが面白くて、だからメチャクチャやっても品性はきちんと保たれてる。美人だし、包容力あるし、こりゃ男共がメロメロになるのもしょうがないって感じの女性です。

そんな彼女だから本来ならお宝に縛られるなんて真っ平ごめんだと思うのですが、今回の事件に関しては自身の父と先祖が絡むとあって、当事者の中心として積極的に行動を起こします。が、後に微妙に当事者でないことがわかり、あっさりと全てを捨て本来の自分に戻る。
この辺の筋の通し方はいいですね。
非常に都合がいいストーリーになっていますが、何者にも縛られないドロテを描くなら、最後はあれでよかったと思います。



瀬名秀明の「大空のドロテ」は本作が元になっています。
昔読んだ「妖魔と女探偵」はすっかり忘れてて、これを読み直さなきゃ「大空のドロテ」には手が出せなかったんですよね。
というわけで、そのうち「大空~」の方も読む予定。
手軽な文庫本が出ないかなーと、のんびりと待ってます。
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by teri-kan | 2013-09-13 10:10 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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