「ウネルヴィル城館の秘密」

新潮文庫の表紙の著者名は「アルセーヌ・ルパン」。
「えっ?」と驚いてしまいますが、これは実はボワロ=ナルスジャックによるパスティーシュ(模倣作品)。
ルブランの死後何十年もたった1973年発表の、アルセーヌ・ルパンが活躍するミステリーです。

子供の頃ポプラ社版で読みましたが(「悪魔のダイヤ」)、当然内容は忘却の彼方。
なので全くの新作感覚で読む事ができました。
なかなか面白かったけど、残念ながらルブランのルパンとは微妙に違うので、ルパンものとして感想を書くのはちょっと難しいかな。

殺人と謎のキーワードをめぐる歴史的事件を背景にした宝探しのお話で、その謎とか事件とか、ミステリー部分はいろいろ凝ってて面白いのですが、肝心のルパンのキャラの面で限界があるなあというのが正直なところです。
なんていうか、愛嬌が足りないんですよね。
ルブランのルパンに感じる愛すべきバカっぽさがないというか、お茶目さんじゃないというか、ムチャクチャやっても「しょーがないなーぼっちゃんは」とヴィクトワール目線で撫でてあげたくなるような、「あんたはアホか」とケリを入れて突っ込みたくなるような、そんな愛嬌が不足しているのですよ。

もともと私のルパンの読み方がそんな感じで、謎解きや事件は案外どうでもよくて、ルパンがどう冒険をするのか、お相手の女性とどういう関係を作っていくのか、それをメインに楽しんで読んでたところがあるんですね。
実際ブログに書いてきた私のルパンの感想ってほとんどそんなで、特に「奇岩城」なんてそうなんだけど、ルパンがその時その時にどういう心理状態でいるのかが、私にとってのルパンシリーズの重要ポイントなのです。
なのでそこの部分で「ちょっと違うな」というのが見えてしまうと、やっぱり本家とは違うよなーという感想が第一にきてしまいます。

ま、昔ポプラ社版を読んだ時はそんなこと全然わからなかったですけどね。



実はまだルパンのパスティーシュはあるので、次を読んでみたら印象は変わるかもしれません。
変わらなかったらボワロ=ナルスジャックのイメージするルパンと私の思うルパンはちょっと違っているってことなんでしょう。
それはそれでその違いを楽しむという読み方をすればいいだけです。

ちなみに本作はフランスで1973年度の「批評のミステリー賞」なるものを受賞したそうです。
良作であるとは確かに言えると思います。




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by teri-kan | 2013-09-25 10:45 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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