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「SWAN」モスクワ編 その26

立ち去る後姿!ひらめくコートの裾!
いきなりの最終回!
思いっきり力技!

先生は何のためにドイツへ!?
アダージェットとは一体!?
クリスとアリスって一体!?

思えばモスクワの観衆はレオンに冷淡だった。
でもドイツ人はレオンをホメホメ!
もちろん真澄も誉めまくり!
ベストカップル誕生!イヤッホー!
素晴らしい大団円!
しかしやはり真澄の顔は「ドチラサマ?」



「SWAN MAGAZINE 34号」
初読時ははっきりいって「なんじゃこりゃ!」でした。
どうやってこれの感想を書けと(笑)。
気を取り直して翌日読み返したら、「うーん、まあ、そうねえ」くらいには緩和した。
大いに無理があるが、真澄の感情の流れ的にはそういうのもありかなあとか思えないこともなかった。
しかしやはり今号を31号の直後にもってきても良かったのではという気がする。
アダージェットと先生のくだりはどれだけ必要だったのか。
それはモスクワで出来なかったことなのか。
もしくはこれからのドイツ編でゆっくりと時間をかけて無理なく展開させることは出来なかったのか。
なんかいろいろと急ぎすぎというか詰め込みすぎというか、やるならじっくりやってほしかったし、この先ドイツ編をやるのなら長期ご利用は計画的にじゃないけれど、前号からの急激な展開と収束の仕方に工夫が欲しかった。
無理矢理感を感じなくてすむような流れでいってほしかったです。



そんなこんなのモスクワ編最終回。
正直な感想だけなら上記の通りなんですが、最終回ということで疑問に思うことも含めてつらつらと書いてみたいと思います。








真澄の成長的にこの展開を考えれば、実はわからないでもないここ最近の流れではあるのです。
NYでルシィを死なせて真澄は自分の心を押さえつけるようになった。→ リリアナの死により心を解放。→ 心が求めるままに行動できるようになる。
一見「解放されてヨカッタヨカッタ」なんですが、この「解放された心」っていうのが実はクセモノで、真澄の心封じ込め時代はかなり長くて、3年?4年? とにかく長いのですよ。その間に事態がまるで変わってしまったくらいにすごく長い。
だからどうしても真澄の心と現実との間にギャップが出来てしまう。特に先生との関係においていろいろと上手くいかないことが起こってしまう。

もしNYでルシィと出会わず、ルシィにあんな形で死なれることもなかったら、真澄は帰国後の東京でも自分の感情のままに欲求を出せたと思うんですね。だから「アグリーダック」東京公演のパートナーも案外先生が務めたんじゃないかと思うんだ。
そりゃ先生は断るよ。でもノーマル真澄はそんなのキニシナイ。ドイツでレオンをほったらかして雨の中先生を追いかけたくらい自分の感情のままに動く。自分が成功を収めるために先生と踊ることが必要だと思えばそれをそのまま先生にぶつける。
それに先生がほだされるかどうかは微妙なとこだけど、東京のあの頃だったらほだされる可能性はあったと思う。
そしてリリアナを含めた三人の関係がどうなったかはともかく、少なくとも例の大失敗は免れただろう。
真澄、心を押さえつけていたせいで結構キャリアを無駄にしてるところあるんですよね……。

個人的には、あの時に心が押さえつけられていたのが惜しすぎるんですよね。感情をぶつけ合える関係を先生と(リリアナとも)作れたかもしれないのに。
だから今更先生に泣き言言ったってしょうがないんだよ。リリアナは死んで、真澄にはレオンがいる。そりゃこれまで特別扱いされてる割には先生にろくに甘えたことなかったから一回くらい無理を言ってもいいかとは思いますが、ありのままの欲を出すなら今じゃなかったよね。(今というか前号だけど。)

先生への思いが過去のものなのに今もフラフラしてしまうというのは、まあ覚醒して混乱してるからってのもあるんでしょうけど、おそらく先生への思いを出すべき時に出せなかったのが大きな原因で、これはレオンとの関係を深めるのとは別のところで真澄はずっと抱えていくべきのものなんじゃないか、と個人的には思う。
なんていうか、そうそうスッキリサッパリ昇華されるものじゃないというか、なんでそう簡単に区切りをつけないといけないんだ?って感じ。しかも、なぜこんな短期間にアッサリ昇華できちゃってんだよって感じ。

解脱したかのようにサッパリ爽やかな顔して踊ってる今回の真澄にはかなり違和感というか、それはそれとして苦い感情として心に抱えておくべきものだろう、この年からそんな悟りきった答えを出してどーすんねん、どーせなら先生への言葉に出来ない微妙な感情を踊りにして表現してくれよとか、読んでて思っちゃうんですよねえ。

残念なのは、強固な師弟関係のように見えて、実は微妙で繊細だった真澄と先生の関係が、最後の最後に真澄の雄弁なモノローグによって繊細なものでなくなってしまったというところ。
過去の先生への感情が自分をそうさせたんだ、で終わらせてほしくなかったな。
過去の感情を抱えてる今の自分を真摯に見つめてほしかった。
心を押さえつけていた時期のせいで失ったものもあるということを、そしてそれはやり直すことも取り戻すこともできないということを、もう少し考えてほしかった。
過去の先生への気持ちが云々なんて言い出すならば。

なんていうか、押さえつけていたものから解き放たれて、自由な気分でいるのはいいけれど、自由に考えられるようになったからって結論を早く出そうとしてるようなところが気にかかるんだよね。
真澄は基本的に熟考を重ねる子だったと思うんだけどな。
むしろこんなにあっさりと先生への思いと先生との関係に区切りをつけようとしてるのが危ういくらいだ。
区切りは必要だけど、切り捨てるように区切る必要はないだろう。
ハイテンションの今の真澄は結構恐い。



なんか長くなってきた。
続きは次回。
Commented by かのん at 2013-12-18 14:01 x
そうですね、モスクワ編の最終回としては、チョッと拍子抜けですかね。

本筋とはチョッと離れますが、
あの頃のバレエ漫画で「アラベスク」は有名だと思いますが、
ノンナとミロノフ先生との師弟関係がラブストーリーでハッピーエンドで、だとしたら、有吉先生的に同じ様に、先生と真澄の師弟以上の関係を描くことは、希望したとしても難しかったのでは?と勝手に想像^^;
「NYバード」の愛子、神崎先生しかり・・・

「まいあ」の中に、「アグリー・ダック」をモスクワで踊ることが本決まりに
なって、踊りにあんなに悩んでいたのに、今回の終了宣言。
はあーっ?と言うか、もう真澄の中では完結したんですかね・・・

レオンが次へと動いたのなら、いよいよドイツ編では違う展開が期待できるのかしら!?
って、それまで私の気力・体力が持つかどうかは分かりませんが;;;
Commented by teri-kan at 2013-12-19 11:20
かのんさん、こんにちは。

師弟モノ少女マンガは少女マンガの基本みたいなもんですが、「SWAN」は「SWAN」の独自カラーがありますよねえ。
こういう関係の終わり方は想像していませんでしたが。

ドイツ編、「体力の限界!気力も無くなり」にならないうちに始めてもらいたいものですね。
できるだけ若いうちに描いてもらって、できるだけ若いうちに読みたいですから。
こっちもみずみずしさなんてとっくに失われていますから(笑)。
Commented by 柳 多久 at 2016-02-22 21:35 x
はじめまして!!
つい先日SWANの続編であるモスクワ編があることを知り、teri-kanさまのSWANの感想記事にたどり着きました。
teri-kanさまの、丁寧な感想記事を拝読していたら気持ちがおさまるどころか高まりに高まり、モスクワ編を大人買い、いま本編を再読中です!!

モスクワ編を読んだとき、雨の中レオンを放って先生を追いかけていく真澄に、私は最初どこか違和感というか、どうしちゃったの真澄!? と唐突な印象を受けたのですが、teri-kanさまの感想を読んで、改めて本編を読み返してみると、最初の頃の真澄は、感情が高まると周囲の目なんかいっさい気にならなくなり心のままに行動しちゃう子だったんだなあ、雨の中先生を追っていった真澄は、teri-kanさまのいう「ノーマル真澄」なんだなあと、あの行動がとても納得できました。
また、teri-kanさまの、真澄はあのとき心を押さえつけたことによって、キャリアを無駄にしている、という言葉に、なるほど~!! と思いました。
けれどあの経験があったからこそ成長した、というのはあると思われますか?
個人的には、あの辺りで真澄は大人になったなあと初めて読んだとき思った覚えがあります。いま思うとただ心を押さえつけておとなしくなっていただけなのかなとも思いますが……。
しかし一度あの真澄に慣れた後、心のまま行動する真澄を見ると、若干傍若無人な感じがしてしまって戸惑います。
それはteri-kanさまの言葉を借りますと、心を抑えている期間が長すぎて、事態がまるで変ってしまったがゆえ、なのでしょうか。

Commented by 柳 多久 at 2016-02-22 21:37 x
(長々とすみません><)
またteri-kanさまの、「強固な師弟関係のように見えて、実は微妙で繊細だった真澄と先生の関係が、最後の最後に真澄の雄弁なモノローグによって繊細なものでなくなってしまった」
という言葉に、はっとしました。
いま本編を再読していても、真澄と先生の関係って、本当に特殊だなあと思ったので。
真澄は他の人が好きでも、先生はそれとは別枠で絶対的に特別な存在で、そして先生も、真澄に対する入れ込みようが、いま改めて読むとすごいです。
恋愛関係ではない、けれどただの師弟関係の枠ではおさまりきらない。
その先生への思いを、本当に真澄はばさっと断ち切ってしまったのでしょうか。
けれどレオンがアダージェットを踊る二人を見て、この二人が関係を切れるわけないだろー!! と思っているところを見ると、これからも色々あるのでしょうか。
本当にあってほしいなあと思います。

いきなり長々失礼しました><
teri-kanさまの感想本当に素敵です。
改めてSWANという漫画の素晴らしさを教えていただきました。
これからも楽しみにしております。
Commented by teri-kan at 2016-02-23 16:59
柳 多久様
こんにちは、はじめまして。
丁寧なコメントありがとうございます。

>けれどあの経験があったからこそ成長した、というのはあると思われますか?

あの時期も真澄には必要だったと考えていますが、先生とイロイロあったら面白かったのになあという思いをなかなか捨てきれません(笑)。
雨の中レオンを置き去りにして先生を追いかけるなんて、「違う、今じゃない」としか言いようがありませんしね。

NY行きが全てだったんでしょうね。
でも振り返ってみてもモスクワでなくNYを選択したのはベストだったと思いますし、レオンとのバレエ人生の重なり具合もピッタリです。
真澄のバレエは多少つまずくことはあっても道は外さずここまでとりあえず順調。
先生ともゴタゴタしなくて一安心といえば一安心だし、でもだからこそ先生との関係に早々に結論出さなくてもよかったのでは、と思ってしまうんですよねえ。

レオンは二人の関係が切れるわけがないって思ってたけど、私は今ではその辺悲観的です。
案外真澄はすっきりさっぱりしてるんじゃないかと思っています。
先生はコートの背中見せて立ち去ってるし(涙)。
もしかしたらレオンだけが気にするパターンかもしれません。
それはそれでちょっとイヤだけど、たまには先生の影くらい出てくれたらいいですね。

モスクワ編の感想は「SWAN MAGAZINE」が出るたび書いていたので、気が付けばとんでもない分量に膨れ上がってたのですが、楽しんで読んでいただけたとのことで嬉しく思います。
いやー、ホント、いい漫画ですよね!
ドイツ編もありますし、また新しい号が出た際には嬉々として感想を書いてると思いますので、訪ねて来て下さればと思います。

コメントどうもありがとうございました。
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by teri-kan | 2013-12-17 14:35 | 漫画(SWAN) | Comments(5)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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