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偶像の中身の解説

前回の「芸術の中身の解説」の続きです。
ここ何年かのフィギュアスケートの状況に思うこと。








ソチ直前のフィギュア女子の見所紹介番組で、何人かの金メダル候補のストロングポイントを解説者が説明していたんですが、前大会金メダリスト選手の特長として芸術性や表現力が挙げられていて、とても驚きました。
彼女は体が硬く音楽を表現するといったことについてはかなり問題があると思うのに、もしかしてこの4年で柔軟性が上がったのか?と不思議に思ったんですね。
で、ソチの演技を見て、やっぱり体は固いしスピンも汚い。ジャンプの成功率は完璧ですが、芸術性が素晴らしいかと言われると、う~ん?
そりゃ個性はありますよ。その人の個性を表現するという意味での表現力はあります。
でもそれは他の選手にもあるものだし、それだけで優位に立てるほど特別彼女が際立って素晴らしいわけでもないと思うんですよね。

なのになんで芸術性とか表現力とか言うのかわからなくて、そういえばバンクーバーの時の彼女の強みはなんだったかなあと思い返したのですが、確か当時は「ジャンプの技術」「スピードの速さ」「媚態」の三つが彼女のストロングポイントと言われてたんですよね。三つとも突っ込みどころ満載ではあるのですが、それでも確かにこれは絶対女王を支える武器でありました。
で、その武器は今回は武器になってないのか?となると、多分なってないんでしょう。
4年前の強みは現在の絶対女王を成り立たせる強みとはもう言えない現実があって、でも彼女はなぜか今回も金メダル最有力候補の絶対女王。番組的に何か長所を言わなければ辻褄が合わない。となると口にできるのは芸術性だけ。
芸術云々は好みも入り、彼女を芸術的と評する人もいるでしょうが、抜きん出て芸術的かと言われたらそれは違うと思うし、憶測全開の想像ではあるけど、彼女を芸術的と評した解説者の心はそれ以外に何も言えなかったからとしか考えられませんでした。

彼女が良いスケーターなのは間違いないですが、2位以下に大差をつけて勝つほど圧倒的かと言われると首を捻りたくなるのが正直なところで、実は大差の理由をTVで解説してくれないかなあと昔からずっと思っていました。
ジャンプはスロー映像で見ても素人には判別しづらいところがあって、大量加点の理由を技術的な解説と共に語ってくれたら理解できるのにとか、逆に素人目に見てもスピンが美しくないのに、なんで演技中にその指摘をしないのかとか、いろいろと解説者に対して思うことがこの絶対女王に関しては前々からありました。

素晴らしいところには解説者も素晴らしいと言うけど、印象としてはそれしか言わないって感じで、そんなもんだからTVを見てる素人は「なんだかよくわからないけどすごい選手らしい」とだけ思うようになって、いつのまにか他の追随を許さない絶対女王が出来上がっていたって感じなんですよね。何が良くてどうすごいのか説明がつかないほど、解説者も説明してくれないほど、とにかくすごい選手というイメージだけが出来上がる。スピンとか変だなと思うところがあっても、なぜかそれらは指摘することも憚られるほどの絶対的な女王。

ここまでくると完全な偶像化ですね。彼女だからすごいのだという意味すら発生する。ジャンプがすごいから、あるいは芸術性があるから女王なんじゃない、彼女だから女王。
これは、ちょっと、ものすごいことです。

でも偶像化が目的だったのだとすると、意味わからなかった大量加点に納得がいきます。
実はバンクーバーで優勝するだけならあれほどまでの加点は必要なかったとずっと思ってて、もっと控えめに加点した方がかえって八百長だのロビーだの言われなくてよかったのに、なんでわざわざ痛い腹探られるようなことしたのかなあと疑問だったのですが、競り合って勝ち取った金メダルではなく、他の誰も相手にならないほど遥か高みにいる金メダリストが目標だったとなると大納得。
彼女とその周囲は、フィギュアスケート選手という枠から飛びぬけた絶対的な人物というイメージが欲しかったんでしょうね。

そりゃね、いますよ、現役時代も引退後も神様扱いされてる元スポーツ選手。
ペレやマラドーナはそれこそ神扱いだし、日本なら長嶋さんがミスターと呼ばれていつまでも愛されてる。何をしても許される立場にあるし、社会的発言力も高い。
絶対女王がそういったポジションを狙ってたのはまあ正しいとして、うん、それならそれで自由にお国で頑張れば?と思うんだけど、日本にとって問題なのは日本でそれをやろうとしていたことなんですね。
彼女の演技の解説を角をたてないようにやっていたのは日本の解説者達で、他国の事情はよくわからないけど、日本国内では女王の偶像化は彼らのぼんやりした解説のせいで着々と進められたんですよ。

日本のマスコミとスポンサーが彼女で金儲けしようとしてたのは明らかで、そのために彼女の絶対女王化が必要で、浅田を貶めたり持ち上げたりマスコミが極端なのも「すごい浅田よりも更にすごい絶対女王」の図式を作るためで、せっせと偶像作りに精を出してきたというのが真相なんだろうなあと考えた時、「あ、まんま音楽詐欺師の作り方と一緒じゃないか」と気付くのに時間はかかりませんでした。
新興宗教の教祖の作り方にも似てますね。実態のないカリスマです。

偶像化された教祖のようなものと考えれば、解説者の誰もが説明してくれなかった謎の異常加点の説明は簡単について、言うなれば宗教が売りつける壺のようなものですよ。壺自体の価値は10万円なのに教祖の念が込められてるから300万という、その念の部分が絶対女王の加点部分。
要するに実態のないものってことで、なんか大批判受けそうな喩えだけど、でもそう考えればいろいろと合点がいくんです。

彼女の大量加点にはきちんとした根拠があると言うなら是非それを聞きたかったものですが、これまで聞いたことないし(ジャンプの教科書だからというのはダメです)、理由を捻りに捻って考え出したらこんな結論になりました。
彼女に発言力と説得力を与えて何を支配したかったのかわからないけど、まともなスポーツ選手の在り方からは大きく逸脱してるし、目的もどうせろくなもんじゃないだろうし、ここから先は考えない方がいいでしょうね。

絶対女王の絶対化に加担した形になっている日本の解説者には残念の一言です。
でも職を辞して真実を明らかにしたゴーストライターの作曲家のようにはさすがになれないか。音楽業界よりもはるかに大金と欲望渦巻くフィギュア業界ですからね。
でも解説者の良心に少しは期待したいです。
今すぐ全てぶっちゃけろとは言えないので、とりあえずもっと細かく技術の説明を視聴者に対してするとか。
良いところも悪いところも解説する。ジャンプの踏み切り違反も回転不足も公平にどの選手に対してもする。視聴者の目を肥えさせたら特定選手のアラがバレるから余計な知恵はつけさせない方がいいと考えていないと言うならそれなりの解説をする。
観客の目を肥えさせてこそ競技の発展もあるというもの。
フィギュア界のアイドルは必要だろうけど、実力に見合ったアイドルでなければ観客の支持は得られないし、そこら辺は是非ともお願いしたいところです。

大体芸能人じゃないんですからね。
作曲家にしろスポーツ選手にしろ、実力のまともな検証なしに「すごい」というだけを宣伝するのはやめてほしい。
こんなやり方じゃ分野の衰退を招くだけです。
マスコミが筆頭ですが、一般大衆に対してもう少し誠実になってもいいんじゃないかと、ここ最近の諸々を見ていると感じますね。

とにかくまともな解説。
それだけでも少しは良い方に変わるんじゃないかと思います。




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by teri-kan | 2014-03-05 00:19 | スポーツ(オリンピック) | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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