「チェーザレ 破壊の創造者」その2

前回書いたように、私はこの時代のカネにまみれた聖職者、血で血を洗う権力闘争を繰り広げる聖職者、子供を作りまくる聖職者、そんな彼らを神の代理人といって崇める社会、というイタリアがどうにも苦手だったわけですが、この作品は作中でそれに一つの答えを出してくれていました。
ダンテなんですけどね。
ダンテの思想が非常に詳細に書かれてあって、ここの部分は面白かったですね。聖と俗の二元論で支配することをダンテが否定してたってところ。
それを思考し、語るチェーザレも良かった。







10巻までのチェーザレは、まあ嫌いになる人はいないでしょう。
大変魅力的な人物です。出来すぎの男です。
思考が現代的で、当時であれば次元が違いすぎる人物だったのではないかと想像します。
とはいえチェーザレも当時のキリスト教社会を生きている人物ではあります。むしろその論理にどっぷり。しかし柔軟。
あの環境であの精神的な自由さはどこからきたのか、興味がわきますね。

当時の思考の仕方、特に大学で語られている授業内容は、今とは違う論理で成り立っていて面白かったです。
哲学をみっちり勉強したら楽しいんだろうなあと思いました。
本を大量に読まなきゃダメだから自分には無理だけど、キリスト教社会を成り立たせる論理は勉強したら面白そう。

ジョヴァンニ・デ・メディチの卒業試験場面も面白かった。
さすが芸術の保護者。良いか悪いかはともかく、金の使い方は後世まで考えれば間違ってないとは言えるかも。
ジョヴァンニは途中「大丈夫かいな?」ってキャラだったけど、それなりに立派になって大学から旅立ちました。
大学の場面は楽しかったですね。
もろ「青春!」って感じでした。

何度も書いてるけど、イタリアの政争のドロドロはホント苦手なんで、そういった場面よりもアンジェロが登場する大学生活場面の方が楽しく読めました。
政争ドロドロも、まあ勝てばマシだけど、ボルジア家はダメになっちゃいますからねえ。チェーザレも最後はアレだし、この先を考えると辛いですよ。主人公が良いように描かれて、彼に肩入れすればするほど。

歴史的に悪名の方が轟いていて、最期が悲惨で、しかし個人として魅力的であったらしい歴史的人物を主人公にしてる漫画として、青池保子の「アルカサル」がありますが、あれも「残酷王」と酷い呼ばれ方をしていた王様が主人公でした。で、あれも彼の後半生~晩年を読むのが怖くてどうしようもなかった作品でした。
王の全盛期で連載も長期ストップして、「完結せずにこのままでもいいかなあ」なんて正直思ったものです。
結局不幸な部分はすっとばして完結したわけですが、あれはあれで結構良かったと思います、精神的に。
意思と能力に反して没落していく様をじっくりと読み込むのは辛いですよ。

この「チェーザレ」はどうなるんでしょうねえ。
まあ辛い時代の到来以前に、全盛期にもまだ行ってないという現実があるんですけどね。
そこに行くまでが遠い道のりで、しかもそこを描けるのかどうかさえ今は怪しい。
青春時代で終わるならそれはそれでいいかもー、なんて、気弱な読者としては諦めの気持ちも出てきそうです。



今回「チェーザレ」を読んでいて、「アルカサル」で思ったことも同じだったなあと思い出したんだけど、魅力を感じる人物って公平なんですね。
ムラ社会の論理から自由で、根本的にフェアで、そのために苛烈になったり残酷になったり、フェアだからこそナアナアにならないために、ものすごく評価を落とすこともある。
でも作品の題材としてはこれ以上ない素材。
難しい時代の変革期に生きた人物ならばいいお話が描けるに決まってる。
そういった点で「チェーザレ」は面白いです。

新世界が発見される直前の旧世界、役者は豪華、次々出てくる歴史的有名人に、当時のイタリアがどれだけ豊かだったか偲ばれます。
はっきり言って濃すぎ。その分アンジェロがなごむ。
そしてチェーザレは当時の豊かなイタリアを凝縮したような人物。
容姿も、頭脳も、感性も、身体的能力も、本当に豊か。

説明的セリフがどうしても多くなるので、エンターテイメントとして辛い箇所はあるけど、安心安定の惣領印です。
この人、いい男描かせたらやっぱり上手い。
男の人にとってはどうかわからないけど、母性本能くすぐる男、男から見ても魅力的なのかなー。
10巻までのチェーザレはね、可愛いところがいっぱいあって楽しいです。

早く続きが読みたいですね。
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by teri-kan | 2014-07-28 13:36 | 漫画 | Comments(2)
Commented by ごう at 2014-08-12 17:22 x
はじめまして。
SWANの記事をずっと楽しみに読ませていただいています。
番外編もteri-kanさんの記事で知り、
早速本屋で立ち読みしてきました~!!


チェーザレも読まれていたのですね!!

実は私も最近、まだ4巻までですが、チェーザレを読んでいます。(図書館で借りているので、なかなか順番が来ません)。

確かに、彼の後半の人生を思うと、途中で完結もありかなと思います。

2巻を読んだあたりで、塩見七生さんの本を読みました。
漫画の中のチェーザレの顔が浮かんできて、読み進めることが辛かった・・・。

漫画に戻ってからも、「いずれは・・・」と思うと、
何だか辛くて辛くて・・・。

10巻までは大丈夫とのことなので、取り敢えずそこまでは安心して(?)読み進めます!

秋号から始まる、SWANドイツ編の記事も楽しみにしています!!
Commented by teri-kan at 2014-08-13 12:52
こんにちは、ごうさん。はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。

塩野七生の「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」ですね。読んでません(笑)。面白かったですか?
イタリアのドロドロ権謀術数がどうにも苦手で、ここら辺はずっと遠巻きにしてました。
興味がないことはないのですが、なんかいろいろと心が痛くて……。

10巻までの「チェーザレ」は青春物語なので、きっと楽しく読めると思います。
4巻ならまだまだ先があるのでいいですねー。
「SWAN」の感想も読んで下さってるとのことでありがとうございます。
なんだかんだでドイツ編も近づいてきましたね。
楽しみにして待ってましょう。
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