「夢の守り人」

上橋菜穂子著、新潮文庫。

守り人シリーズの第三弾。
タンダとトロガイの過去も明らかになる、呪術師が大活躍のお話です。

以下はネタバレがそこそこある感想です。









読んでる途中までは、「花の守り人」というタイトルの方が内容に合ってるんじゃないかと思っていました。
本作に出てくる「花守り」はあんなですが、一応花の守り人ではあるし、この話の中でこの花は思いっきり主役のようなものだし。
でも最後の最後で「夢の守り人」が何であるかが明かされて、それでこのタイトルに「なるほど」でした。

今回のテーマは呪術師になった彼らの、その選択に至る過程そのものだったのですね。
呪術師になるという、非常に特殊な生業を選んでしまった彼らの、その「選ぶ」という言い方もしっくりこない、むしろ選ばれたというか、そう導かれるしかなかったというか、別にイヤイヤなってしまったわけではなく、でも積極的になりたかったかといえばそうでもなく、そういった「自分の意思以外のものにも促されて選び取った天命のような職」について、花と夢に囚われた人々の人生を絡ませて描かれています。

それはとても複雑で、読んでる途中は結構わかりにくいのだけど、最後までくるとその複雑さのおかげでかえって理解しやすくなる。
「呪術師なんて家業でもないのになんでそんな職を?」って聞きたくなるものだけど、それに対する答えといっていいんでしょう。
別に呪術師に限ったものでもないけど、知らずにそういう風に生まれついて、流れのようにそういう選択をしてしまうというのは、トロガイやタンダが呪術師になったそのなり方と、案外同じようなものなのかもしれないなと思います。

チャグムが成長してて、一生懸命頑張ってるのがうれしかった。
まだまだ子供で、沈んだり泣いたり忙しいのだけど、でも器量の大きさはビシビシ感じさせてくれて、この先が楽しみです。
秀逸だったのは風そのものだった歌い手のキャラクター。
風にもいろいろありますが、この風は絶対心地よい風だろうと思えてしょうがない。
ホントいいキャラでした。
捉えどころのなさや無責任さが、まさに風で。

彼の歌と森や湖といった自然の木霊が共鳴するというのは、おそらくものすごいことで、例えるなら音響抜群のホールで歌ったのと同じような、もしかしたらそれ以上の効果が大自然の屋外で表れるってことですよね。
大気がコンサートホールのようなものになる感じというか、でもホールのように閉じられているのではなく共鳴が更に外に膨らんで広がっていって、もう想像するだけですごいのですが、確かに決して私達には聞くことのできない幻の歌です。
そんな歌が現れたというのは、その場にいた人達にとっては幸運だったですねえ。

だから、ちょっとジンが可哀想かな。
与えられた役目も過酷極まりなかったけど、あの歌の体験ができなかったのも可哀想。
タンダも半分自業自得とはいえ可哀想。
取り返しのつかないことにならなかったのはホントにバルサのおかげで、二人の結びつきの強固さが心に沁みます。
とりあえず良かった良かった。



夢を題材にした作品っていくつか読んだことがあるけど、わかりにくいことも多くてなかなか先に進まなくて、で、やっぱり「夢の守り人」もなかなか進まなくて、絡んでくる人達の関係性を頭の中で整理するのが大変でした。
結局あの花はなんだったんだろうって感じだし。
種は大事だけど。
あちらの世界の生き物は、卵やら種やら、繁殖や種の保存という肝心要の部分で随分こちらの世界に関わってるようで、その辺がどういう意味を持っているのかが気になりますね。

うん、いやー、結構難しかったかな。すごく面白かったけど。
今回は登場人物のキャラクターが「精霊の守り人」から更に際立ってきていて、そこの面白さも大きかったです。
みんな良いキャラしてますね。
[PR]
by teri-kan | 2015-02-04 11:22 | 本(上橋菜穂子) | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 「虚空の旅人」 自由の氾濫 >>