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「マスケティアーズ」もスペインが悪者

映画やドラマのこの時代のスペインって、ここ百年のドイツやソ連(ロシア)並みの悪者扱いですよね。
ヨーロッパのあちこちで苛烈な支配をやってたからしょうがないんですが。
フランスもいい加減いろんな国と戦争やってるけどスペインもやりまくってるし、両国の陰謀合戦スパイ合戦はドラマ以上にえげつなかったんでしょうねえ。








そんな陰謀の狭間に立って、王と王妃の離間工作、王と銃士隊の離間工作に勤しんでるロシュフォール。
今回の国王誘拐事件は、彼にとっては棚からぼた餅、渡りに船。
王が死んでは元も子もないですが、王と銃士隊の間に亀裂が入れば万々歳とばかりに立ち回っておりました。
王の我儘が発端とはいえ銃士のミスではありますからね。
銃士隊が厳しい立場に置かれるのは仕方ない。
王が助かったのはミレディのおかげという、ただの運だったし。

そう。
出ました、ミレディー!
これは一応「情けは人の為ならず」と言っていいのかな(苦笑)?
アトスがミレディを殺さなかったことがアトスの命を救ったと考えるのはビミョーすぎるんだけど、王を取り戻せなければ関わった銃士は皆つるし首だったでしょうし、ミレディを見た時のアトスの顔はそれこそビミョーすぎてなんとも言えませんでした。
アトスの平穏、短かったなー。

王のキャラクターが素晴らしすぎて、脚本と台詞の一つ一つにブラボーな回でした。
帝王学を仕込まれた常人ではない人、なんですよね。
悪人ではないが、有能でもなく、能天気ではあるが、鈍感。
あれだけの体験をしながらも、だからどうするという発想は出て来ない。
自分とは無縁の争いに巻き込まれたという不快な思いだけを抱え、好き放題の沙汰を出す。
隊長の言うように根は善良だけど、王の器にはない王。
リシュリューという重しがなくなった今、この王はちょっとヤバイ。

リシュリューがいれば夜の町にお忍びなんて絶対許さなかったでしょう。
むしろリシュリューがいなくなったからこそ我儘が出たと言える。
「庶民たのしー、ウキャキャキャキャッ!」なんて笑ってる場合じゃないんだよ。
ウキャキャキャ言ってる王はかわいかったが、この王が羽を伸ばして自由にバッサバッサと羽ばたかせたら、周りはどんどん悲惨になる。
これは隊長の胃が痛いぞー。

王のお忍びがよりによって王太子の洗礼式直前というのがすごいんだけど、単純に考えて洗礼式後はスケジュールが詰まってたんでしょう。
おかげで王妃は怒り心頭。
というより不安と焦り心頭ですね。
カトリック世界では洗礼は超重要ですが、何より王子をお披露目し世継ぎとして世に認めさせる式として、王妃は洗礼式をとても重要視していたはずなんです。
王の立ち合いが王妃にとって絶対だったのも、王が王として王太子を認める姿が目に見える形で必要だったからで、これは明らかに王子が不義の子という事情ゆえ。
王子に関わる全てを普通より完璧に行いたいという意識になるのは、王妃の現状を考えると無理ないことのように思います。

つけこまれる隙を一切与えたくないんですね。
例えば今後「王の子にしてはちょっとおかしくないかしら?」なんて噂がたてられた時、「そういえば洗礼式に王は出席しなかった。マジで王の子じゃないんじゃないか」なんて話を膨らませられたら困るのです。
だから隊長にもあんなにキツく言ってしまう。
仕方ないとはいえ、隊長の胃はますます痛いことにー!

王子を産まなきゃ更に悲惨だったので、この道に後悔は微塵もないと思いますが、今の王妃は孤独ですね。
ロシュフォールに頼ってしまうのもしょうがない。
いざとなれば実家を頼るしかないと揺れてしまうのもしょうがない。
気心知れた同郷の宮廷人も侍女もなし、愛する人とは会話を交わすことすら難しく、王太子を真の意味で守れるのは自分だけ。
唯一頼りにできるのは王なんだけど、これがまた死んでるのやら生きてるのやらさっぱり。

というわけであの文書にサインってことになるんだけど、いやー、うーん、上手いと思います、このドラマ。
史実でも王妃とスペイン王の手紙が問題になるんだけど、このドラマは王妃にはフランスをスペインに売るつもりはさらさらないということになってる。
サインへの追い詰められ方もこの状況じゃ仕方ないと納得できるものになってる。
ロシュフォールに王は死ぬ死ぬ言われてさぞしんどかったことでしょう。
今の王妃は可哀想だな。
コンスタンスは頼りにはならないし、なんとか一人で頑張るしかない。

その点アラミスは辛い心持ちをアトスに吐くことができるのでまだマシです。
王太子の教育係にやってることはサイテーだが。
王妃と王太子に近づくために女官に手を出すというのは、正しい宮廷恋愛事情ではあるのだろうけど、こっちとしては「ああああああ~アラミスうう~」と頭を抱えたくなる。
隊長に「また女のところか」って言われてるし、しょっちゅう通ってるんだろうなあ。
アトスの忠告全然聞いちゃいねー。
どうしてこう皆好き勝手なことばかり。
隊長の胃がますますボロボロにー!

しかもあの教育係、ずっと前からアラミスのことが気になってた人だったのね。
だから先週のあの時「うふん」って態度だったのね。
なんかもうアラミスの業が深すぎて神にお祈りしたくなってきた。
このままじゃロクな後生を迎えられないよ。
でも王太子抱っこして「パパですよー、泣き止んでー」をやってるアラミスは良かった。
なのでこのまま業の深いアラミスをとりあえず希望。
あの世から枢機卿に呪い殺されるまで頑張れ。

といった感じの庶民になった王様のお話でした。
今回良かったのはダルタニアンかなー。
三銃士とは王への接し方がちょっと違うんですよね。
三人よりもっと親しみがこもってて、忠実度が高そうだった。
アトスも忠実だけど、アトスの場合は職業柄こうあるべきという態度でしかないし。
アラミスは王妃の事を置いておいても距離を縮めようという気はまるでなし。
ポルトスもなるべく最低限でといった感じ。
さすが三人は王との関わりが長いだけある。
でもその分ダルタニアンのラストの悲しみは深かった。
王の王ゆえの傍若無人ぶりを理解できるようになるのはまだ先か、もうすぐか。
ここを飲み込めるようになったらダルタニアンも大人の仲間入りかな。
ドラマはきちんとダルタニアンの成長物語になってますね。



にしても、ガレー船の漕ぎ手かあ。
王様には無理だよねえ。
奴隷って買う方が悪いんだけど、売る方も売る方で、結局自国民が自国民をさらって売ってるんですよね。
犯罪の裏にスペイン大使がいたからスペイン許すまじ!ってなるけど、やはり今回のこれはフランスの問題で、王がどうにか手を打たないといけないんですよね。
それがぺパンの恩に報いることになるんだけど、王はもう彼のことすっかり忘れてそうだなあ……。
このままじゃやっぱりバカ王だなあ……。




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by teri-kan | 2016-06-20 23:55 | 海外ドラマ | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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