「ブラン・マントー通りの謎」

ニコラ警視の事件シリーズ、第1巻目。
ジャン=フランソワ・パロ著、ランダムハウス講談社文庫。

時は戦争にあけくれるフランス、ルイ15世の御世。
魑魅魍魎が跋扈するパリを舞台に、ブルターニュから上京したばかりの青年ニコラが、なぜかわからぬまま難事件解明の任をまかされ、悩みながらも奮闘、解決に向けて頑張っていく、というお話です。







本書は2000年に刊行という、現代に書かれたブルボン朝の事件モノ。
こういうのは時代ミステリー小説というジャンルになるのかな?
現代人向けに当時の習俗が詳しく描かれてるので、雰囲気がわかりやすいです。

たとえばデュマの作品と比較するとすごく映像的。
19世紀に書かれたデュマと比べると、本作はセットと小道具に細部まで凝ったテレビドラマを見ているかのよう。
デュマなら当時として当たり前すぎてスルーしてたところを、本作では説明的に描いてる、と言えばいいでしょうか。
ブルボン朝時代からの時間的距離の違いなのでしょうが、やはりデュマは近くて、本書のパロは遠い現代人なのだと思います。
当時のパリの臭さや汚さとか、そういうのこそよく伝わるように描かれています。

ミステリー作品でネタバレは最低すぎるので、内容について詳しく書くのは避けますが、個人的には警察総監のキャラが気に入りました。
総監とニコラの掛け合いは面白い。
ニコラがちょっと思考回路がウネウネしてる人で、いわゆる悩みすぎる人というか、まあ一言で言うならナイーブな青年ってことなんだけど、総監がそういうのとは真逆のタイプなので、二人のやりとりはかなり面白いことになってます。

この作品には実在の人物が何人か登場してて、上に挙げた総監の他、有名な死刑執行人のサンソンも出てきます。
結構重要人物というか、見せ場、見せ所がしっかりある。
まだルイ15世が元気な時代ですから、若いサンソンです。
彼が語るダミアン(ルイ15世の暗殺未遂犯)の処刑シーンはグロいの一言で、読みながら「ギロチン早よ!」と願わずにはいられない、そんな微妙な時代のサンソン。
案外人間の体って頑丈というか、なぜなかなか死ねないか、そういたことを冷静に粛々と語ってくれています。

パリ歴史事典によると、ダミアンの処刑は一時間ほどかかったらしい。
サンソンの語るあれやこれやを一時間もかけてやったのかーと、意識が遠い彼方に飛んでいきそうです。
ちなみにこのパリ歴史事典には歴代総監の名も載っていて、本書の総監の名もきちんとある。
こういうところ、正確に作り込まれてる作品のようです。

「ダルタニャン物語」を読んだ時に参考にした古地図も本書を理解するのに役立ちました。
例の古地図は教会を絵付きで書いてくれてるのでわかりやすいのです。
本書も各地区の教会が鍵を握ってるし、通りの名と教会のある場所さえ押さえておけばOKという、本書にピッタリの古地図になってる。
あの地図は通りと公共物以外に余計な情報がないのがいいですね。



という風に、いろいろとことん楽しめる本だったので、第2巻も読んでみます。
ニコラの更なる活躍と警察総監に期待!




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by teri-kan | 2018-03-19 15:40 | | Comments(2)
Commented by ごう at 2018-03-31 05:49 x
こんにちは!
チェーザレの記事にコメントさせていただいて以来です。
お久しぶりです。

SWANの記事を読んでいて、
ふと気になった「ブラン・マントー通りの謎」。

早速、図書館に予約を入れて読んでみたら・・・
おもしろかったです~
歴史は得意ではないので、
時代背景とかあまりよく分からないのですが、
そんな私でも楽しく読めました。
少し勉強しようかな?

「鉛を呑まされた男」も読みました!
「ロワイヤル通りの悪魔憑き」は予約中です。

地元の図書館にはなかったので、
主人の勤務地のある図書館で借りてもらってます。

このシリーズは日本語訳されているものは3冊だけなのでしょうか?
そうであれば、残念です・・・

いずれにせよ、おもしろい本を紹介して頂きありがとうございます!
Commented by teri-kan at 2018-04-02 01:43
ごう様、こんにちは。

コメントどうもありがとうございます。
面白かったとのことでよかったです!

>このシリーズは日本語訳されているものは3冊だけなのでしょうか?

どうやらそうみたいです(涙)。
地元の図書館になかったとのことですが、市場に出回ってるのも中古しかないような感じで、おそらく売れ行きが芳しくなかったのだと思われます。

こんなに面白いのに何故!?
残念ですよね……。

「ロワイヤル通り~」は近々ここにも感想をあげる予定です。
あと1冊、どうか楽しんで下さい!
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