「死者を起こせ」

フレッド・ヴァルガス著、創元推理文庫。
1996年仏ミステリ批評家賞、2006年英国推理作家協会(CWA)賞ダンカン・ローリー・インターナショナル・ダガー受賞のフレンチミステリー。


私のフランス文学の旅はブルボン朝を離れてとうとう現代へ。
でも深刻になりたくないからミステリー。
フランスのエンターテイメント小説(翻訳済)ってどうやって探せばいいんでしょうね?
特に王朝時代モノ。







本書は本国で人気らしく、これを第一冊目としてシリーズ化されています。
その名も「三聖人シリーズ」。
実は数あるフレンチミステリーの中で何故これを選んだかというと、「現代において聖人とはどういうことだ?」という疑問を持ったからでした。
ですが、何より惹かれたのは、彼ら(主人公とその仲間達)が歴史学者だったこと。
三人が歴史学者なのはとても効いていて面白かったですね。

彼らは売れない歴史学者で、悲しくも貧乏暇アリな35歳の男ども。
日々の些末な出来事・事件を追いかける時間だけはたっぷりある。
主人公は中世史が専門で、後の二人は先史時代と第一次世界大戦なんだけど、三人のキャラの描き分けが専門にしてる歴史を反映していて、これが結構ニヤニヤできる。
先史時代専門の彼が着衣嫌いというのはいくらなんでもどーよな感じはするけど、そういうところ徹底してます。
第一次世界大戦の彼にかかると、東西の隣家すら「東部戦線」「西武戦線」になるのが面白い。

ミステリー作品なので詳しい粗筋は省きますが、個人的にはとても好みの、上品な作品でした。
人物描写が楽しかったですね。
で、どこが上品かというと、それは訳者のあとがきにある通り。
わかりやすく述べてくれているので、ここにそのまま引用します。



『本書を読んでおわかりのように、ヴァルガスのミステリには血なまぐさい惨劇の描写はない。それに、「ミステリは社会を映す鏡でなければならないとか、社会批判がなければならないとかいう考えには与しない」とヴァルガスは言う。彼女によればミステリは「不安の解消」を楽しむものなのである。読者は実生活でさまざまな問題を抱えている。ミステリのなかの問題は本の最後には解決される。そして読者は安らかに眠れるというわけだ。「しかし、アメリカにあるように、秩序を取り戻し、すべての悪人を罰するといった、社会浄化を旗印に掲げているようなミステリ」には批判的だ。』



作者のこの姿勢は好きです。
アメリカを例に出してるけど、まあアメリカに限らず、説教くさいのは私も好きではありません。
そういった意味で本書は押しつけがましくなく、心地よく読める作品でした。
こういうのを好む方にはおススメですね。

ちなみに著者は女性です。
フレッドだけど女性。




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by teri-kan | 2018-04-18 22:23 | | Comments(0)
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