「彼の個人的な運命」

フレッド・ヴァルガス著、創元推理文庫。
「三聖人」シリーズの第三弾。

シリーズはいまのところここまでのようです。







今作は聖人三人とも大活躍。
特に二作目でほとんど出番のなかった聖ルカが「え?」という方向で活躍。
この人達はホントに個性が強烈ですねえ。

これまでと違い今回はメインキャラの追加はなく、よって人物紹介的な彼らの日常描写は省かれて、いきなり事件が描かれます。
そのため最初からぐいぐい読ませる展開。
三作中で一番読みやすいお話ではないかと思います。

前の二作は事件ではないように見せかけた事件を暴く内容でしたが、今回はなんと連続殺人。
事件は既に世間で話題になっており、作中人物も読んでるこっちも日数のなさにジリジリさせられる……といったストーリーです。

これまた詳しく書くとマズいので事件についてはこのくらいにするとして、個人的にすごく気になったのが、聖マルコが金を稼ぐためとはいえ、中世史とは全く無縁の家政夫業に勤しんでいるということ。
……うん、なんでまた家政夫なのだ。
フランスでは普通にあるのかな?

マルコ、しょっちゅうアイロンがけしてるんだよね。
中世の船の幅の研究よりもアイロンがけの描写ばかり出てくるような気が。
常に中世史の研究はしてて、前作でも地方の事件現場に行く際に資料も持参してるくらいなんだけど、それが身になってるのかどうか、歴史関係の職に近づけているのかどうか、さっぱりわからない。
痩せてて、いつも革を着てて、そんな三十代後半の兄ちゃんがご婦人のスカートにせっせとアイロンかけてる姿はなかなか絵になるものではあるけれど、それでいいのか聖マルコ!と、ちょっと言ってみたりして。



ところで、本作では詩が出てきます。
フランス人は詩が大事なんだなあというか、普通に生活に詩が登場して、結構皆普通に暗唱できたりする。
日本なら和歌とか俳句かなと思うけど、やっぱりこういうのは暗唱ですよね。
ヨーロッパはフランスに限らす詩だなあと思います。

私は詩は全く不得手で、詩音痴と言ってもいいくらいなんだけど、本作にネルヴァルの詩が出てきたんですよねえ。
ちょっと前に読んだ本もネルヴァルが取り上げられてて、たいしてそれ系の本を読んでるわけでもないのにネルヴァルがこうも現れてくると、なんとなく「読んだ方がいいのかな?」なんて気になってくる。
作家にとってネルヴァルは重要というか、有名だから皆が読んでる古典として取り上げるのにちょうどいいのかな?
フランス人、あるいは西洋人にとってネルヴァルの位置がどんなものなのか、ちょっと気になる。



三聖人シリーズは今のところ出てるのはこの三作だけですが、いつかまた彼らが登場する作品を読みたいものです。
彼ら自身が私はお気に入りなので、無理して殺人事件ストーリーでなくてもいいんじゃないかってくらいなんだけど、でも事件に絡む彼らは面白いので、やっぱり事件モノで書いてくれたらうれしいな。

ちなみに聖人だの聖マルコだの書いてますが、聖マルコの本名はマルクです。
三人ともそれぞれ今風の本名がきちんとついてる。
で、彼らは聖人名で呼ばれることを実は嫌がってる。
でもやってることは結構いいことというか、いつも無償で事件解決のために働いてるんですよ。
文句言わずに割と自発的に世のため人のために頑張ってる。

今回もしみじみ「えらいなあ、この人達」って思いましたもん。
性格は変わってるんですけどね。
でもとってもいい奴らです。
素敵なキャラなので、やっぱり彼らが登場する作品を、作者には是非とも再び書いてもらいたいものです。




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by teri-kan | 2018-05-16 16:00 | | Comments(0)
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