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「イムリ」その1

三宅乱丈のSFファンタジー漫画。
現在23巻まで出ていて、このたび一気に全巻読みました。

一言で言えば、「支配」について書かれた物語。
人間が社会を作る動物である限りどうしても生まれてしまう「支配」というものを、特殊な舞台と種族を絡めていろんな側面から描いているお話です。



結構残酷な漫画なのですが、描写がそこまでグロくないので小心者の私でも大丈夫でした。
舞台設定が私達の知る社会や人間とはかけ離れてるおかげです。
ぶっ飛んでいる分ある意味問題がわかりやすく提示されていて、変なストレスも溜まらない。
お話自体は悲劇的なんだけど前向きさは常にあるし、漫画として大変面白い作品だと思います。

ストーリーの説明としては、ウィキより引用させていただきます。
「二重惑星マージとルーンを舞台に、カーマ・イムリ・イコルの三種族を巻き込んでゆく星間戦争をカーマの少年デュルクの視点を通して描く。」

というわけで、ここから先はネタバレありの23巻までの感想です。







「覚醒者」とは奴隷化から覚醒された奇跡の人だから覚醒者なのだ、ということにどうかなってくれと、今は一番それを願ってる状態です。
でないとこのままではあんまりですよね。

イムリとカーマの戦いについては、大地の力をその身に宿して戦うイムリと、人工的な科学兵器で戦うカーマ、という図式がはっきりしていて、特にイムリの力は驚異的なんだけど、ようするにそれって自然現象を発展させたものということで、言い換えれば彼らの種族としての戦いは、「自然VS文明」なんですよね。
今現在地球で人間が自然相手にやってることと実はそうたいした違いはないという話なのです。

で、自然現象に毎年ボコボコにやられてる日本人としては、途中経過がどうであれ最終的にはカーマが負けるだろうという予測しかたてられない。
23巻でチムリがとんでもない力を発揮するけど、あれは本人が意図したものではない現象、つまり彼女の体(とか精神状態)と大地(とか大気とか)が共鳴して起こした現象で、やはりあの星が起こした自然現象としか言うしかなく、となると星を敵にしたカーマに勝ち目はない。

なぜならカーマが子孫を残すにもその星の力が必要だからで、そうである限りその星の力と一体化できるイムリには究極的には適わないということにどうしてもなるのです。
多分カーマの上層部はそれをわかってる。
だからイムリを徹底的に弾圧する。
でもそれは滅びへの歩みなんですよねえ。
今の混乱は結局はカーマ社会の行き詰まり故。
既に衰退期に入っていたカーマの、もしかしたら最終戦争になるのかもしれません。

まあ、カーマをどうにかした後にイムリとイコルの間で何かが起こらないとも限らないけど。
古代戦争の原因から推察するに、どうやらこの二つの種族には因縁がありそうなのです。
私が性格の悪いカーマなら、イムリとイコルは過去に戦っていたということを現在の彼らに嫌らしく吹き込むけど、その辺どうなりますかね。
そんなことしてたらいつまでも終わりそうにないからその展開は全然歓迎しないけど。

とにかく、そういうのも含めて四千年前の事が知りたくてたまらないのですが、1巻に出てくる古代文献の記述は23巻まで読んで振り返ると、なんとも心に苦しいものがありますね。
三種族の力関係があまりにもありえる話なのですよ。
現実の歴史でいうと、案外グレートブリテン島の民族の力関係が似てるんじゃないかな。
アングロサクソンがカーマで、ウェールズがイコルで、スコットランドがイムリ。
スコットランドと戦うためにアングロサクソンを呼び寄せたウェールズが、逆にアングロサクソンに支配されちゃったという構図。

でもここは違うかなというところは、カーマはもともと三種族の中では最も弱かったのではないかと思われるところ。
もしかしたらかなりイコルにいいように使われていた種族かもしれません。
だからこその現在の徹底したイコルの奴隷化だとも考えられます。
カーマのあの猜疑心の強い性格はもともと弱かったからこそのものじゃないかなあ。

いやあ、古代戦争がどういう経緯をたどったのかかホントに知りたいですよ。
イムリがどういう種族だったのか、現在のようにのほほんとした人達だったのか、それとも元々は戦う人達の方がメインの種族だったのか、とても気になる。
かつての覚醒者も双子だったはずなので、カーマとイムリそれぞれについて双子で対立したのか、それとも戦争を終わらせるためにそれぞれの代表として手打ちをしたのか、ホントに知りたい。

で、カーマがなぜあんな業を負うことになってしまったのかも。
誰も全く幸せになっていないこの社会システムが構築されたいきさつには興味津々です。
最初にこの漫画は「支配」のお話だと書いたけれど、実は真に支配者と呼べる人物は存在しないんですよね。
誰も彼もが支配されている人達なのです。
まあ、人間である限りそこはしょうがないところなんだけど、いやー、ホントに知りたいことがたくさんですよ。



23巻を読む限りクライマックスに入りつつあるのだろうとは思うのだけど、一体完結までこれからどのくらいかかるんだろう?
早くスッキリしたいけど、多分まだまだ長い道のりなんだろうなあ。

24巻が待ち遠しいです。




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by teri-kan | 2018-11-16 11:00 | 漫画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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