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「バラバ」(1961)

監督は「ミクロの決死圏」や「トラ・トラ・トラ!」のリチャード・フライシャー。
主演はアンソニー・クイン。
でもイタリア映画。(言語は英語)

バラバはイエス・キリストの処刑と引き換えに赦免された男で、本作もイエスの処刑から始まります。






こないだNHK-BSで放送されたんだけど、こんな映画があったことを知りませんでした。
「信仰とは?」がテーマの映画ですが、雰囲気は「ベンハー」とか「十戒」とか、あの頃流行ったエンターテイメント性の強い大作スペクタクル映画。
セットやエキストラなど贅沢です。

バラバはイエスと正反対の位置にいる人なんですね。
窃盗・殺人を犯した本当の罪人で、でもイエスは処刑され、バラバは赦免される。
再び捕らえられるも処刑は許されず、死よりも過酷な重労働の刑に処せられる。
生き続けることを強制されるのです。

そんな始まりだったので、神に帰依した時点で死ぬんだろーなーって思いながら見てたんだけど、このバラバ、とにかく頑丈な男でなかなか死なない。
20年にわたる硫黄まみれの地下重労働生活でも死なない。
死なないどころかその後の肉体労働でもバリバリ働いて、なんとあの年で剣闘士になっても死なない。
奴隷の身でいる間は彼の本能は生き延びることが第一になっていて、キリストについて悩みはするけど奴隷時代は帰依しない。

神の教えを無視しコロッセオでとどめの殺人を犯したことで晴れて自由民の身分を得るけど、そうなって初めて神の教えに近づいてしまうところが皮肉というか、結局生きるか死ぬかの極限状態にある人は肉体の生存本能の方が勝ってしまうみたいな、バラバに関してはそんなことになっちゃってるかなあ。

キリスト教の神にとっては大事なのは人の命じゃないんだねって、思わされるお話ですね。
ユダヤ人もローマ人も当時の人間はナチュラルに残酷で、その中で愛を説いたイエスの教えはとんでもなく大事だと思うし、あの時期のキリスト教は真に弱者を救う価値観の大転換をもたらしてくれた教えだったと思うけど、バラバに死ねない呪いをかけたみたいになっちゃって、結果的に「死の恩寵を得たければキリスト教に帰依しなさい」みたいなことになってるのは、なんともなあって感じでした。

死との距離や捉え方が今とは違うにしても、殉死はやっぱりイヤだなあ。
神の教えは死よりも上位にあるっていうのは、そりゃローマ人からしたら「何なのこいつら」にもなろうってものでしょう。
キリスト教を弾圧するローマひどい!って思うけど、キリスト教も天下を取れば残虐行為のオンパレードだから、見る目も妙に冷静になっちゃいますね。

権威の伴わないキリスト教はとてもいいものだけど、キリスト教は死を権威にしてるから、うーんなところがどうしてもあります。
映画の中でもあったけど、一人一人の殉教の積み重ねが神の国を作るというの、なるほどと思う反面とんでもなく恐ろしい気が。
人の死を意味あるものにするのは人が生きていくために必要だけど、それを逆さまにする教えは怖いです。




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by teri-kan | 2019-02-18 00:00 | その他の映画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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