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「ブルボン朝 フランス王朝史3」その1

「カペー朝」「ヴァロワ朝」に続くフランス王朝史第三弾にして最終巻。

王家と言えばブルボン、王といえばルイ。
日本人が抱く王様イメージといえばコレ!のブルボン家の王の歴史がまとまってる本です。

佐藤賢一著、講談社現代新書。







さすがに年代が新しいので、カペー朝やヴァロワ朝と比べると記述が細かく、登場人物も多い。
政治的にも経済的にも複雑で書いてあることがたくさん。
そしてそれぞれの王は皆個性的。
というか、ブルボン家に王位が来た経緯そのものが異常で、アンリ四世がその異常な状況下で大王とまで呼ばれた傑物だったというのが、まずはすごい。
改めて思ったけど、よくまああの状態のフランスをまとめあげたものです。

そしてそこからのフランスは、なんとかまとめたはいいものの、まだまだキナ臭いフランスをどうするかという課題に取り組まなければならなくて、ルイ13世は宰相が優秀だったので良かったとして、問題はその次と次ですよ。
もうねえ、ルイ14世の項を読んでると「フランス革命はこの人のせいだ」と思うし、ルイ15世の項を読んでると「フランス革命はこの人のせいだ」と思うし、異様なほどに長生きしたこの二人の王様には「おまえらー」な気持ちになってしまう。

いや、まだしもルイ14世は不安定な国内をまとめ上げる仕上げに成功した。
今あるフランスブランドは彼が作った。
太陽王と言われてる人だけど、もうなんて言うんだろう、バレエ王、ダンス王、タレント王、アーティスト王、アイドル王、エンタメ王、プロデューサー王、ファッションリーダー王、エトセトラエトセトラ。
ベルサイユとフランスを世界の名だたるブランドにした功績はすごいとしか言えない。

でもルイ15世はしみじみダメだった。
知ってたけど本当にダメだった。
きっと誰が書いてもダメな人なんだろう。
いいのは顔だけだったが、その顔も最後は「ベルサイユのばら」のアレである。

ルイ16世の項を読んでるとどんどん悲しい気持ちになって、でもヴァレンヌ事件以降の王は素晴らしく、著者のルイ16世評の感動的なことといったらなくて、この最後の王の政治力を見てたらね、やっぱり全ての原因はベルサイユだったんじゃないかなあという思いを強くするしかない。

所詮ベルサイユは元猟場。遊びの場所。
政治をする場所じゃなく、王がタレントをする所。
国の王ならば国民の近くにいるべきだった。
国民と向かい合うところまで引きずり下ろされて初めて真価を発揮したルイ16世を見ると、ベルサイユにあって世間の空気が読めなかったことを非難してもしょうがない気がしてくる。

確かにパリは厄介だったと思いますよ。
でも逃げちゃいけなかったんだと思う。
復古王政で王になったルイ16世の弟達が、亡命先で世の移り変わりを見ただろうに王権神授説に取りすがって立憲君主制を認めなかったというのは、ベルサイユ育ちのせいと言ってもいいんじゃないかなあ。
ベルサイユで王というタレントをやるのが王の仕事、という時代は、ひいひいひいじいさんの時で終わるべきでしたよね。

……となると、やっぱりいけないのはルイ15世か。
ブランドを作った次の国内政策をするべきだったのに、女遊びと戦争で人生を終わらせた。
ホントこの人だけはあかんかったなあ。
何も褒めるところがなかった。

著者的には一番の不出来はルイ13世っぽい。
一概に比較はできないけど。
なかなか子供を作らなかったので王の最大の責務を放棄してた面はありますよね。
遅くに生まれた嫡男ルイ14世の全名は「ルイ・デュードネ」なんだけど、デュードネって「神が与えた子」という有り難い意味の名前らしい。
でも「神が与えた」ってことは、イエスと同じで「父親がいない」って意味にもなるらしい。
「父親が得体の知れない子」なんだそーだ。

先日読んだデュマの「千霊一霊物語」で革命中にサンドニの王墓を暴いて歴代の王の遺骸を穴にまとめて入れる場面が出てくるんだけど、ルイ14世の顔については、遺体は黒くなってたけど顔立ちにブルボン家系の特徴が見られるって書いてあって、これが本当なら、仮に父親がルイ13世でなくてもブルボン家につながる男性が父親の可能性があるということになる。
または、デュマは王家の名誉のためにルイ14世をルイ13世の息子にきちんと確定させたか。

ルイ15世の遺骸は臭気ただようおぞましい腐敗物に成り果てていたらしい。
そりゃ「ベルサイユのばら」のあの顔の王をそのままお墓に納めたらねー。
いくら保存のための処置を施したと言っても、天然痘で崩れた遺骸を焼かずに棺桶に収めるというのは……あんまりサンドニ行きたくないな、って感じですね。



まあとにかく、個性豊かな王が揃ったブルボン朝でした。
地方の野山育ちのアンリ4世の臨機応変さ、バレエ大好きルイ14世の際立ったタレント性、理系・技術系王のルイ16世、資質に優れた王はなんだかんだで印象深い。
残りの二人の特徴となると……ルイ13世は男色家で、ルイ15世は無類の女好きってところか。
女好きな王は他にもいるけどルイ15世が印象悪いのはそれしかしてないからだな。

復古王政の王については、まあいいか。
諸々の続きは次回に。
次は「ブルボン朝」はもちろん、「カペー朝」「ヴァロワ朝」も含めたフランス自体の感想です。





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by teri-kan | 2019-07-16 00:00 | 本(歴史書・新書 海外) | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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