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「ブルボン朝 フランス王朝史3」その2

前回の続き。
フランスについていろいろ考えたりしたことを。







この本の「おわりに」に書いてあるブルボン朝のまとめが面白い。
長年宗教で苦労したフランスだったけど、革命で得た「自由、平等、博愛」はフランスの新たな宗教になったという指摘には膝を打つ思いがしました。
「フランス革命の省察」の感想で書いたフランス人への疑問の答えでもある気がします。
革命の理念は今もフランス人には絶対ですから。

でも王が絶対の人も数は少ないながら今もいる。
フランスは政治体制がコロコロ変わったけど、変わる度新たな価値観が生まれ、その価値観を信条とする人も次々生まれて、時代を重ねるごとに国内がいろんな価値でどんどん分かれていっている。

エマニュエル・トッドが戦後カトリックの信仰生活が人々からなくなっていって、その穴を埋めるがごとくにEUの理念が信仰された、といったことを書いていたけど、フランス人がフランスを束ねる価値とか宗教とかいうものをずっと追い求めるのは、もしかしたらこの国の宿命のようなものではないかと思えてきました。
原因はよくわからないけど、このシリーズを読んでて一つ思うのは、ユグノー戦争が宗教戦争でありながらあまりにも宗教的信条とは関係のない、貴族同士の仁義なき権力闘争だったのが大きかったというのはあるかもしれません。

この国って結局、王権が大事、自由の理念が大事、EUの理念が大事といろいろ言ってるけど、結局のところ誰がいい目をみるかという権力争いしかしてないんじゃないか。
むしろそんな権力争いが真実だからこそ王だ自由だEUだの「理念」ばかりを大々的に掲げるんじゃないか。
何をもってしても「まとまる」なんてことは無理なんじゃないかという気が。

と考えると、いろいろ問題はあったがルイ14世のベルサイユ・ブランド化による「フランス王が神である、フランスそのものが神である」といった文化・流行による国作りは正解だったのかもしれない。
それでまとまるくらいしか平和的なフランスにはならないような気がしてならない。

まあ、流行は常にアップデートしなければ国民はついていかなくて、王は新しい文化と思想を提供し続けなきゃいけないわけで、そんなことしてたら共和主義という思想が国の流行りになってしまうこともあるわけで、実際政治思想はその後入れ替わり立ち代わりのフランスになってしまうわけだけど、ルイ14世の作った文化の神フランスというイメージはフランスにそのまま根付いたと言っていいのではないかと思いますね。
日本ではいまだに「フランス人のライフスタイルはこんなに素敵」的な本が出版されるし、今のフランスが食べていけるのは文化という観光資源のおかげ。

なので、4月にノートルダム大聖堂の屋根が焼け落ちたけど、昔のままに作り直すのではなく新しくデザインすると言ってたのは、フランス的にはきっと正しい事なんですね。
既存の価値感より新しい価値観、新たな思想を持つ建築物で世界をリードする、それこそがフランス。

でもフランス企業のCEOの方達の申し出た寄付金額にはガッカリ。
あんな高額では反発が出るに決まってるのに、遠慮するってことを知らないのにも驚いた。
金持ってる人間は持ってるように振る舞えばいいってことなんだろうけど、結局王朝時代の貴族と何も変わってないように見える。
神様もマリア様も、一人が100億出すより百万人が1万ずつ出してくれた方がうれしいんじゃないかと思うんだけどなあ。

富裕税の問題って別にフランスだけじゃないけど、「政府が富裕税をかけたらわしらは国を出ていく」と脅してる富裕層って、王にたてつきながら王があるからこその特権を放さない貴族と一緒だよねえ。
ホントにもう、今こそ革命の理念を思い出せフランス!ですよ。
これじゃルイ16世は殺され損じゃないか。

こうして歴代の王を並べてみても、ルイ16世は無能でも残酷でもないだけに、彼が王制全ての罪を背負わされてしまったのは残念でした。
やっぱり問題は貴族でしたよねえ。
小さな国に分かれて王を選挙で選んでたドイツと違って、早くから議会によって王の力が制限されていたイングランドとも違って、フランスの王対貴族の戦いは激しい。
フランスの三つの王朝史のお話に共通してるのは、外国との戦争をずっとしながら、王はどのように貴族と戦い、貴族の力を弱めようと苦心したかってことで、結局最後まで貴族にたたられたのがフランス王、ということになってる気が。

結局「王とは何か」みたいなとこまでいってしまうのだけど、やっぱりフランスは王をギロチンにかけたのは大失敗だったような気がするなあ。
復古王政で上手い事やればよかっただけなのかもしれないけど、それができたらあの王弟達ではないんだろうなあ。



何とも言えないです、フランス史。
でもとても面白い。
酷い状態でも自信満々で明るくエラソーだし。
なんなんでしょうね、あれ。
文章が明るいからそういう風に思えるのかな?
単純に読み物として楽しい本なんだけど、著者の思惑に乗せられてしまってるかもしれません。

ともかく、そういった感じの楽しいフランス王朝史シリーズでした。





by teri-kan | 2019-07-18 00:00 | 本(歴史書・新書 海外) | Comments(0)
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