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「7SEEDS」その9

花は正義感の強い女の子だけど、花が象徴してるのは多分正義感ではないのだと思う、この話では。







未来のあの世界において食べ物の好き嫌いなんて言ってられないし、生きていけるのは何でも食べられる人、最後まで生き残る人はそれこそ意地汚いくらい食べることに執着してる人だろうと思うのだけど、それで言うなら言い方は悪いけど(むしろここでは誉め言葉として使うけど)、花は生きることに意地汚い女の子なのだと思います。

綺麗な言い方をすれば「生命力が強くてしぶとい」ってことですが、とにかく花がこの作品で担ってる役割は「生命力」。
あゆが「ゴキブリ並み」と評してるけど、人類滅亡を経験したこの世界では最大級の誉め言葉。
この作品においては花は正義感のある女の子というより前に、「生命力が強い女の子、生き抜くために危地にさえ飛び込んで戦える女の子」と理解するべきだろうと考えます。

花は多くの登場人物に慕われるけど、考えてみれば当然のことで、あの世界で自分が生き抜こうと思うのなら、生命力の強い人間にくっついて行動するべきなのです。
わざわざ意識してそう考えなくても、そうすれば自分の生存率を高められると本能が察知するのだから、本能のままに花についていけばいい。
朔也なんて超わかりやすい。「自分を置いていかないから花さん好き」ですからね。
春と秋のメンバーがそれぞれああいう体験(水を得るために率先して崖を登ったり、地下から抜けるために先頭きって水中に潜ったり)を経て花を慕うようになるのは納得できる。

終盤で「花」と名付けた理由が明らかにされるけど、貴士さんの「(花は)植物が工夫に工夫を重ねて作った最終勝利形態」という言葉は、まつりが芽を出した大豆を見つけて放った台詞と合わせて考えたらいいと思いますね。
「(植物は)可憐で優しくて争わない」のではなく、「たくましくて生存競争バリバリに努力してる連中」。

花は「たくましくて生存競争バリバリ」な女の子で、未来に来たくて来たわけではなかった一般人メンバーからしてみれば、頼りにもなり憧れにもなりえる存在。
夏Aは過酷なテストで生き残った生命力のプロのような人達だけど、花はもっと野生に寄っていて、ちょっと他にはない存在。
少女漫画のヒロインとしては変わってるけど、その分恋愛感情はしっかり描かれてるし、むしろ恋愛感情をエネルギーに出来てるからこそ生命力をギリギリまで発揮できるという感じかな?
17歳の女の子ならエネルギー源が恋愛感情なのは普通ですからね。

なので、嵐と再会して佐渡の安定した定住生活が始まってからは、少なくとも戦う花ではなくなるので、とても穏やかで、そしてちょっと弱い花になる。
安居と涼に対して毛を逆立てるだけでも大変そう。
でも年月がたてば花の生命力と危機察知能力が彼らを危険物として扱うことも和らいでくるようになるのではと思う。
安定した余裕のある生活が今後ずっと続けばいいなと思う。

そうすれば物事も深く考えられるようになるでしょう。
実は深く考えないことは生き延びる事とも関係していて、父親のことで罪の意識ばかりに囚われていたら、花は目の前のサバイバルで戦い抜くことは難しかったと思います。
罪の意識に囚われて夢遊病者のように徘徊していた安居は実際かなり危険だったはずで、あの環境で無事だったのはひとえに涼のおかげなだけでした。
安居は自分が堕ちたのと同じ境遇に花も堕としたかったようだけど、それをされると生きていけないですからね、花は逃げるしかありませんでした。
安居と花と、それに絡んだ涼の三人のせめぎ合いは、それこそ生命力の戦いのようなものだったと思います。

まあ、花は昔から深く考える子供じゃなかったようだけど、藤子ちゃんやナツと仲良くなって変わってきてるようだし、佐渡での生活でもっと変わっていくんじゃないかな。
人数の限られた落ち着いた社会で生き延びるために必要なスキルも、生命力のある人だからこれから身につけるんだと思う。

今の環境に適した花を咲かせてもらいたいですね。
以前の日本の学校社会の土壌は花に合わなくて、嵐という鉢の中でしか咲かせられなかったけど、未来の土壌は花に合ってるらしいから、他者と共存しながら花を咲かせること、できるんじゃないかな。
そうなることを希望。



では、次回はそんな花と対比できる人物について。
花の存在は便利です。



(続く)




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by teri-kan | 2019-10-17 00:00 | 漫画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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