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「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」(2019)その3

エピソード8の感想でスター・ウォーズは英雄の神話から群像劇になるのか?と書きましたが、本作で完全にそうなりました。
銀英伝風に言うならば、「伝説が終わり、歴史が始まる」です。
神話は終わり、人々が紡ぐ歴史の時代がこれから始まるのでしょう。







皇帝の本拠地でレジスタンスが壊滅寸前になったところで、数えきれないほどの民間機が助っ人に駆け付けた場面は感動的でした。
30年前に帝国と戦った人もいて感慨もひとしおでした。

ランドが久々に登場して、だいぶ老けてたけど笑った顔がランドで、これまた懐かしい。
ファルコンは今回も大活躍で、ルークが初めて乗った時から既にボロい設定だったけど、こんなバトルによく耐えられるなあと感心するほど働いた。
そんなこんなの細かいところはいろいろと楽しかったです。

でも、この三部作をルーカスが作ってたらどうなったかなあ?と、今となっては適わぬ思いも自然とわいてきたのでした。
これはやっぱりルーカスのスター・ウォーズじゃないんだよね。
フォースのバランスの結末については納得なんだけど、それ以外の部分ではいろいろと考えてしまう内容でありました。

エピソード9に対して言えば、映画としてはきちんと出来てると思うのです。
物議を醸した8と比べるとはるかに良い出来。
でも三部作全てに言えることなんだけど、ちょっと新キャラが弱い。
キャラを立てることに関してはルーカスは際立って素晴らしかったのだと思い知らされました。

フィンにもうちょっと愛嬌があればよかった……というか、それでいうならポーももう少し天真爛漫なエキスがあったら……というか、真面目過ぎるんだよーみんな。
レイもレンもローズもみんながみんな、あまりに真面目すぎるんだ。
ルーカスに敬意を払ってふざけちゃいけないって思ったのかどうかわかんないけど、人物に余裕がない。
しかも皆が皆心の旅というか自分探しをやっていて、真面目があちこちにありすぎる。

ルーカスはそうじゃなかったでしょ?
あのウザすぎるジャージャーを出してきた人だよ?
終始ドシリアスなエピソード3「シスの復讐」にさえグリーヴァス将軍というイケてる悪者を登場させた。
エピソード1から6までは随所に遊び心が満載で、その余裕が見ていて楽しかったんだよー。

そりゃルーカスはいろいろとダサかったですよ。
エピソード2「クローンの攻撃」のアナキンとパドメの草原ゴロゴロは見ていてクラクラしたし、「シスの復讐」でパドメが髪にブラシをあてるシーンなんて、なんでそこでやる!?って観るたび思ったし、ホントいろいろ「え?」なところがあるんだけど、でもキャラだけは皆魅力的なんだ。
魅力的だったんだ。
そこが今回の三部作は弱くて、キャラが立たないから彼らに皆心の旅をさせてるけど、彼らの成長は大事だとして、スター・ウォーズという作品に必要なのはそれじゃなかったんじゃないかとどうしても思ってしまう。

ルーカスは作り方が神話的だったというか、昔話風だったというか、神話だとキャラに託された役割が明確なので、個性もわかりやすくなったという面はあったかと思います。
今回の三部作は神話の時代を終わらせてフォースを操らない人達の群像劇に移行する、という目的があったと思うので、フザけた悪役とかコメディ担当とか、そういうのはドロイド以外は登場させられなかったかなあというのは、ちょっと思ったりする。
でも出てくる人達みんな出自に悩んでたり行動に悩んでたり、今風な苦悩をしてる人達ばかりで、かえって人物がぼやけた感じがしました。

あ、カイロ・レンはその点良かったかも。
ヤツについてはずっと文句を書き続けたけど、書く意欲がわいてくるほど強烈ではあった。
中二病をこじらせたナイーブな青年の役をきちんと演じてくれて、思えばこの三作の感想はヤツで埋め尽くされたと言っても過言ではない。
闇に惹かれるアナキンの弱さと、善良なパドメの精神と、根っからの自由人のハンの魂が彼の中にあるのだと思えば、グダグダ悩んでばかりだったあの子も可愛く思えるというものです。

結局彼だけが三作通してブレずに描かれた人物だったということかな?
違う監督が務めた弊害がフィンやポー、ローズなどには出てしまったのではと思います。
ローズのラブはどこへ行った?って感じだったし(別にあってほしいわけじゃないが)、フィンは何を言いたかったのか結局明かさないままだし(これが続編に繋がるとか勘弁してほしい)、ハックス将軍のスパイってなんやねんって感じだし(小物感すごすぎてかえって面白かったけど)、スノークはそんなバカなな正体だったし(もっと意味があるのかと思ってた)、なんかいろんなところで「えええええ~」ではありました。
コンセプトがあっち行きこっち行きした軌跡が見えてしまうのがちょっとね。
やっぱりルーカスに撮ってもらいたかったかなあ。

いや、それはそれで……うーん。
やはり続編を作ったこと自体が間違いだったか。



結局旧作に出てた人達でもったエピソード7~9だったということで、古くからこのシリーズを見てきた人間の一人としては満足だったけど、純粋に映画作品としては「どうなのかな?」って感じに世間の評価も落ち着くのかなあと思います。
ハンとルーク、レイアと皇帝の最期を見届けられたのはファンとしてはありがたかったし、期待していたものの最低限は見せてくれたと思います。

ただまあ、最初に書いたけど、英雄の神話は終わり、人々のお話が始まる、というのは、これまでのスター・ウォーズとの完全な別れを意味するので寂しい。
今後もディズニーはこのシリーズを作っていくそうだけど、正直一体何をテーマにして描くのかな?とは思う。
個人的にはスカイウォーカー神話が好きだったので、今後の話は怖いな。



さようなら、スカイウォーカー。
ありがとう、スカイウォーカー。
全てに関わったC-3PO、R2-D2、そしてチューイにありがとう。
ドロイドはともかく、チューイがジェダイやスカイウォーカー家の歴史を間近で見てきたというのは何気にちょっとすごいかもと思います。

この三人、これからどうするのかな。
レイアはいなくなってしまったし、チューイもレイと行動を共にするのかどうなのか、彼らの行く末だけが今は気になる「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」でありました。

というわけで、スター・ウォーズよ、ありがとう、さようなら~。




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by teri-kan | 2019-12-27 12:04 | アメリカ映画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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