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「図南の翼」 十二国記6

小野不由美著、新潮文庫。

エピソード4「風の万里 黎明の岸」で初登場した恭国の王の物語。
あの小さい少女王が登極するまでの道のりを描いた作品です。







さすがに子供ではある。
ガキでさえあるんだけど、彼女の資質に王の器を見ることは難しくなく、楽しみながら読むことができたお話でした。

メインは彼女の成長物語なんだけど、全体的には黄海物語とも言えます。
黄海の景色、黄海の危険さ、黄海に生きる人々。
テーマはいうなれば「黄海とはなんぞや」。
エピソード2「風の海~」では結構簡単そうに昇山してきたように見えた人達が、実はかなり大変だったのだということがわかる内容になっています。

話の中でも言ってたけど、「え?そんな子供が昇山するの?」っていうのは確かにあって、私もこれを読むまでは恭国は慶国と同じように麒麟が王を迎えに行ったとばかり思っていました。
なので読みながらずっと「供麒なにしてんねん」って立腹してました。
小さい彼女が時に死にそうになりながら必死に歩き続けてるのに、世界をひとっ飛びの麒麟が蓬山で女仙に囲まれてダラダラしてるとか、なんだそれ?と。

景麒なんて市井まで降りて探して、二度目は日本まで出張って陽子を連れて帰ったのに(ホント真面目な男だ)、供麒は27年もなにしてんのやと。なんて怠惰なボケ麒麟なんだと。
もうね、ラストシーンを読むまでもなく、現在のあの関係性の二人が出会う前からありありと見えて、なんだかおかしいやらお気の毒やら、相性がいいのやら悪いのやら、面白かったですね。

でもこの後良い統治が続くのだから良いコンビなんだろうなあ。
ビンタされても笑える供麒が珠晶には合ってるのかもしれない。
まあ、あのお嬢さんに合う麒麟となると、口うるさいのでは長続きしないような気もするし、あれくらいおっとりした麒麟(見かけは違うけど)がいいのかもしれない。
おっとりというか、「風の万里~」ではメソメソした麒麟って感じだったけど。

まあ、ラストで彼女がそういった行動に出るくらい黄海の旅は大変だったということで、でもその黄海には黄海の守護者という方がいらっしゃって、なんとなんと、ここで登場するんですよ、彼が。
もう感激ですよー。
大出世じゃないですか。
ちゃんとあの後生きていけたのかなと密かに心配していた身としては、ある意味天職のような地位についていて、もう一安心の大安心ですよ。
黄海って全然怖いところじゃないじゃんというか。
黄朱の守護者がホントの彼らの理解者だったというところ、いいなあって思いました。



本作にはこれまで気になっていた奏国の王も登場します。
予想していたおじいさんではなかったけど、ある意味好々爺ではありました。
えらくアットホームで、これはあれですね、父親が王になるとなった時、「親父だけじゃ無理だから一家みんなでがんばろーぜ」みたいなことに家族会議でなったと推測。
なるほど、これが長く善政が続いている理由かと、得心いきました。

いやね、雁国が長く繁栄する理由はわかるんですよ。
王も麒麟も蓬莱出身者で、特に延麒はしょっちゅう日本に出張してるし、あちらの社会を参考にして国の活性化を図ることができるから。
でも奏国がずっとダレずに一人の王のもと繁栄してるのが不思議で、この疑問が解決されたこともこの巻の収穫かな。

宗麟はファミリーに大事にされてそう。
ここは幸せそうでホントに良い。




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by teri-kan | 2020-01-22 00:00 | 本(小説) | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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