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無観客の紅白歌合戦 その2

今回は新型コロナのせいで密を避けるという形式になり、図らずもそのおかげで「変な演出がなくて良かった」「歌をスムーズに聞けて良かった」と世間は高評価。
「今後もこのパターンでいけばいい」といった声まで出ています。

でも今後もそれではそこら辺の歌番組と変わらなくなるのでは、とちょっとモヤモヤ。
昭和の紅白歌合戦が原体験にある人間にとっては、紅白歌合戦はただの歌番組ではないのですよね。
はっきり言ってしまえば、紅白歌合戦は歌番組という名のお祭りなのです。







今でこそ頻繁に出場しているユーミンですが、彼女がヒット曲を連発していた80年代前後、彼女のようなシンガーソングライターは紅白とはほぼ無縁でした。
あくまでも個人的な感覚なんだけど、ミュージシャンと芸能人は別物だったのです。

当時テレビによく出ていた歌手はミュージシャンではなく芸能人でした。
芸能人なので歌手の方々は歌以外にも普段からいろいろやってました。
毎年のように運動会に出て走ったり跳んだり、水泳大会は体を張って水着になって、新春かくし芸大会では何かしらの芸を披露して、普段から寸劇だのコントだの歌以外のことで大忙し。
でもそういうのが普通で、だから紅白歌合戦でそんな演出があってもそれが当たり前。
むしろ選ばれた歌手だけで演じる選ばれた大晦日の芸。
大御所演歌歌手の後ろで日舞を踊る人気アイドル歌手なんてものも見れたし、紅白歌合戦はその年の芸能界のお祭りだったのです。

それが変わってきたのが、記憶では80年代後半。
1988年に出場したTM NETWORKと爆風スランプのエピソードが象徴的なんだけど、その年の紅白、TMは自分の曲以外では全くステージに立たず、番組放送中ずっとロケバスに籠ってたんですね。(それを出場の条件としたらしい。)
後からそれを知った爆風スランプのサンプラザ中野がものすごく羨ましがって、「応援をやらずにすむなら自分達だってやりたくなかった」と言ったのだとか。
どうやら「紅白に出て歌うのはいいけど応援でいろいろやらなきゃならないのはイヤだ」ということだったよう。
私も「ミュージシャンは芸能人じゃないもんね」と、当時は納得したものでした。

今現在、以前のような「歌手と名のついた芸能人」はジャニーズくらいのものでしょう。
紅白にジャニーズが出過ぎという批判は以前からあるけど、でも使い勝手が良いんだろうな。
以前なら「VS嵐」のような番組にゲストで出ていたのはアイドル歌手だったけど、今は俳優なんですよね。
ドラマの番宣のためにバラエティに出るのは俳優で、新曲を歌うためにバラエティに出る歌手なんて今はいない。
お茶の間と音楽の距離は今はとても離れてるんだと思います。
もしかしたら国民的番組とミュージシャンという組み合わせがそもそも難しいのかも。
歌さえしっかり聴ければいい、余計な演出などなくていい、という意見は、国民的お祭り番組に向けられる意見としては寂しいけど、もはやそういうものなのだと思った方がいいのかもしれません。



別に昔のような応援合戦をしてほしいとか、芸人をたくさん呼んで派手な演出してほしいとかいうんじゃないんです。
ただ、紅白歌合戦はその年に流行った歌を楽しむ「お祭り」だったよなあと思うだけ。
古い人間の意見だね、で一蹴されるかもしれないけど。

でも、集団でワイワイやることの楽しさを2020年ほど懐かしく思った年はなかったわけで、もうね、一年近く人々はそういったものを奪われてきたのですよ。
年末の第九の大合唱はなし、祭りで練り歩く神輿を囃す大観衆もなし、ライブハウスのギュウギュウもアリーナの大歓声もスタジアムの大歓声もなし。
大人数で声をあげて同じ感動と快感を味わうことこそ人間に与えられた幸福の最たるものだと思うのに、それをもうずっと奪われて、で、今回のお祭りでなかった紅白はその現実を実はこれでもかと見せたような紅白で、歌にはとても感動して癒されたけど、一方でとても寂しさを感じる紅白だったのです。

そう感じていた時に、「歌さえしっかり聴ければそれでいい」「余計な演出いらない」「今後もこんな感じで」と言われると、なんかもうねえ、気持ちはすごくわかるけど、気持ちがわかる分、もうこれまでの紅白歌合戦はホントに終わっちゃうのかもなあと、ますます寂しい気持ちに。

歌だけの紅白だったからこそ、なんかもう切実に思いますよ。
お祭り紅白でこれからもお願いって。
前述した通り、無茶なお願いなんだけどね。

……多分、肝は演歌をどう組み込むか、なんだろうねえ。
確かにまともに歌は聞いちゃいないんだけど、天童よしみと筋肉の組み合わせは良いと思うし、けん玉は裏事情を知ってからは結構真面目に応援してるんだよね。
まあ、いつまでもけん玉やってるわけにはいかないけどさ。

演歌の方々は皆それこそ立派な芸達者な芸能人なので、どんな演出でもプロフェッショナルにやってくれるんですよねえ。
芸能人の歌合戦をミュージシャンが乗っ取っていく過程における、最後の希望なのかもしれません、演歌の方々って。
かといって演歌を増やせとは思わないので、いろいろと詰んでるなあと、自分でも考えながらため息をついてます。




Commented by まるさん at 2021-01-06 15:23 x
 teri-kanさま、あけましておめでとうございます。
 今年も良い年であればいいと思いますが、とにかく、コロナ感染が収まらないのが、困ります。
それはとにかく、紅白は見ました。例年になく、歌のみを追求した良い出来だったと思います。それと、今年ブレークした若い歌手たちの実力が半端ではないので、それを聞くだけでも価値のある時間だったと思います。

 昭和時代の「歌謡」は「歌謡曲」と「ポップス」(フォークとかニューミュージックとか名前は変われど同じ)
自作自演の曲を歌う人と職業作家に曲を提供して貰って歌う人に分かれていました。以前、言ったかもしれませんが、その頃は、その「自作自演」をとても高尚な物として捉えていて、テレビに出ている歌い手を低級とする風潮があったかもしれません。
例えば、松任谷由実さんやそれ以外のミュージックシーンの人々は、テレビではなくて、LIVE(コンサート)やラジオ放送を媒体にして、ファンと交流していたんですよ。ラジオ番組は、今で言うYoutubeみたいなものだっただろうし、実際に簡単に顔を出さない事で、彼らは自分を必要以上に大きく見せる事が出来ました。でも、今になって見ると、私は、その自作自演の歌手たちが、一部の本物を除いては、中途半端な自己満足で終わっていた様な気がしています。実際に、全てを自分だけでやろうとするのは、無理がありますから。
でも、七十年代にも今と同じように、アイドルや演歌歌手に楽曲を書き下ろしていた人は何人もいました。彼らは、プロの歌手に歌って貰う事で、曲の完成度がもっと上がる事を知っていたのでしょうね。これは今のJPOPにも通じる正しい在り方だと思います。

 私は、昔のアイドルは、七十年代までは、それなりの見識があったり、大人だった様な気がするんですよね。特に歳を取っても、それなりに活動をしている人を見るとそう思います。

 何だかまとまりが付かなくてすみません。こういう話になると妙に力が入ってしまいます。
 またの更新、楽しみにしています。もっと、明るい話題で世の中が持ちきりになるような、そんな日々を待ち焦がれております。

Commented by teri-kan at 2021-01-07 10:06
まるさん様、おめでとうございます。

>その「自作自演」をとても高尚な物として捉えていて、テレビに出ている歌い手を低級とする風潮があったかもしれません

紅白に出ないことこそ本物の証、みたいな感じでしたよね。
それが変わったのは80年代のエピックソニー系ミュージシャンの台頭だったように思います。
(個人的にエピックが好きだったので特にそんな印象があります。)
多分MTVのおかげだと思うんだけど、日本のミュージシャンも深夜とはいえミュージックビデオがテレビで流れるようになったのが大きかった気が。
こっちも情報を得るのがラジオだけじゃなくなって、ミュージシャンの活動方法も変わりました。

>昔のアイドルは、七十年代までは、それなりの見識があったり、大人だった様な気がする

山口百恵と松田聖子の入れ替わりくらいってことになりますかね?
たのきんトリオ以後とも言えるかも。
70年代は記憶もぼんやりしてるんですが、アイドルも大人っぽかったですよね。
今とは世相が違うので簡単に比較はできないけど、アイドルへの道がはるかに今は容易いので、いろいろとレベルに差はありそうです。

何にせよ、今年は明るく音楽を楽しめる年になってもらいたいですね。
とにかくコロナ収束!です。
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by teri-kan | 2021-01-06 10:09 | 音楽 | Comments(2)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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