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「スコットランド全史」

副題は 「運命の石」とナショナリズム。
スコットランド王の戴冠の儀式に使われる「石」を軸に、スコットランドの歴史をファンタジーあふれる伝説の時代から現代まで、ざざっと辿る本です。
桜井俊彰著、集英社新書。

著者によるブリテン島三部作の第三弾、ウェールズ、アングロサクソン、ときてのスコットランドです。
スコットランドの歴史は、以前にもスコットランド独立に対しての投票が行われた時、ここでも書いたのだけど、まあ、いろいろと微妙です。
全然まとまらない国なのです。

そのまとまらない理由については、これまであまり深く考えてこなかったんだけど、本書を読めばなるほどとわかって、うーん、最も根深い問題は、結局イングランドとの近さにあるってことなんでしょうね。
イングランドはアングロサクソンの王がノルマン系フランス人のウィリアム征服王に征服されて以降、ずっとフランス人による支配を受けることになるのだけど、その影響がスコットランドにも大きすぎたということが、スコットランドがまとまらない理由の大半を占めているのでありました。
確かにこれでは貴族はバラバラだろうなと思われるほどの、イングランドとのあまりの近さでした。
これは厳しい。

というわけで、スコットランド史って実は全然楽しくないのです。
イングランドにいつもいいようにやられてるし、大英雄のウィリアム・ウォレスも最後は悲惨すぎるし、最も有名なメアリ・スチュワートもアレな生涯だし、ほんと読んでてなんだかなーなのです。

なので面白かったのは、エジプトが絡んだ作り話感満載のスコットランド建国の伝説と、戦後の「運命の石」泥棒事件の顛末。
この二つは面白かったですねー。
どちらも真剣だったんだろうけど、今にしてみればあまりにほのぼのなエピソードです。
特に泥棒話は古き良き時代って感じです。
古き良きって言っても1950年の話だけど。

リアルの今はスコットランドについては全くほのぼのしていません。
イングランドから独立するかしないのか、以前書いた記事でも心配を書きましたが、本書でも最後に書かれていたのは、「スコットランド独立」と言葉では簡単に言っても、文化的社会的にあまりに結びつきや混合具合が密接で、イングランドと完全に分かれることなんて出来るのか?といったことです。
確かに、読んでみるとその通りで、特に独立してしまえばアングロサクソンよりも濃いスコットランドの血をひく王族がスコットランドと切り離されることになるわけで、歴史を見てもあまりにピンとこないなというのは、正直思ってしまいます。
本当に今後どうなるんでしょうね。



最後に。
全然関係ないけど、スコットランドの都市名っていいですよね。
良い雰囲気の名前が多いなあと、実はかねてより思っております。
エジンバラ、グラスゴーもいいし、アバディーン、ダンフリース、アーバイン、ダンバートン、などなど。
ちょっと古めかしい感じがするところが好き。




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by teri-kan | 2023-01-27 00:00 | 本(歴史書・新書 海外) | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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