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「ひらり」と時代性

現在お昼に昔の朝ドラ「ひらり」を再放送してるんだけど、いやー……これがなかなか(苦笑)。
もう終わりも近いのですが、結構すごいお話なので、改めてこのドラマについて。



本放送は1992年(平成4年)、脚本は内館牧子、主題歌はドリカム。
相撲好きなヒロイン(石田ひかり)が恋と夢に向かって頑張るお話で、恋のライバルは結婚適齢期を迎えた姉。
倦怠期でぎくしゃくしてる両親や近所の相撲部屋の若手力士など、周囲にもいろいろある中で、ヒロインが明るく頑張ってます。

当時は全く興味がなく今回初めて見て驚いたのですが、こんなドラマだったんですねえ。
内館牧子だなーって思いました。
今から見るとすごく時代を感じます。

あの頃彼女のドラマはほんのちょっとしか見てなくて、でも「思い出にかわるまで」とかすごく話題になってたし、あれの最後物議を醸してたのも記憶にあるんだけど、こうして「ひらり」を見てると、なぜ彼女のドラマが当時人気を博していたのか、改めて納得できました。

はっきり言って登場人物のやってること言ってることは滅茶苦茶で、特に姉みのりは個人的には最悪なんだけど(苦笑)、あの時代にはこれが必要だったってことなのかと、今この時になって見るからわかった部分がありました。
あのお姉ちゃんの言ってることは、見てるこっちも「なんでこんなことまで口にするんだろう?」なことばかりなんだけど、あれは普通なら心の中で思ってるだけのことをわかりやすく言語化してくれてるんですね。
普通なら決して表に出てこない感情を、みのりはほとんど音声にしてくれている。
こういう時の感情は実はこういうことなのだと説明するかのように。

だからすごくズルいところも醜いところも表現されてしまうわけで、そういったところ役として損してるなと思うけど、当時はああやって微妙な感情一つ一つを言語化すること自体が画期的で、そしてその言語化に世の女性は「そうそう女ってそう」とか「自分の苦しさの原因もそれだ」などとハッとさせられたのです。
言語化された心のズルさに「自分と同じだ」とわかって辛くも思うけど、でも自分では形に出来なかったものが何なのかをドラマで明らかにしてくれて、世の女性はおそらく随分救われたのです。
彼女のドラマは「ひらり」に限らずそういうのが多かったんじゃないかと思う。

「ひらり」では子育てを終えて自分自身に何もないことに鬱屈をためこんでいく専業主婦も描かれるけど、彼女の怒りはきっとそれまでなら「中年の主婦のヒステリー」で済まされていただけのものなんですよね。
でもそのヒステリーの実態が何であるかを「ひらり」ではきちんと描いている。
おそらく当時の主婦の方々もこれを見て「そういうことなのよ」と、形になったそれに救われた気持ちになったんじゃないかな。
……と、見ていて思いました。



まあ、今からしたら姉も母も気楽で優雅なもんなんですけどね。
失われた30年を過ごした後から見たら、姉も母も「なに贅沢言ってんだ」なもんですが、トレンディな当時はホントにあんな感じでしたからねえ。
ドラマも恋愛しか頭にない人間ばかりが出てたし、そういう意味では「ひらり」は本当に恋愛のことしか会話してない姉妹のドラマではある。
ホントにあの時代のドラマ。
あの時代だからこそのストーリー。

でも当時は必要だったんだなと感じました、こういうのが。
結婚適齢期の焦る女性の心情を狡さ醜さ含めてここまで言語化したのはやはりすごい。
「なんだこの女」って思ったし、それを言うならお姉ちゃんのOL仲間も大概だし、ヒロインも「なんだこの子は」な時も多々あるけど、これはこれで貴重なドラマではあったんだなあ。



あと一ヶ月くらいかな?
全然ストーリーを知らないので、最後どうなるか楽しみ。
梅響がいいようになってくれたらいいなあ。
寒風山も椰子の海も頑張ってほしいです。
ちゃんとした相撲部屋ドラマでもありますからね。




Commented by まるさん at 2023-06-02 13:44 x
 teri-kanさま、こんにちは。
 「ひらり」は、とても懐かしいドラマですね。年がバレますが、私は、このお姉ちゃんの年代なので、このドラマは実にリアルなOLの姿だと思います。ただ、このドラマみたいに、適齢期の女性を追い詰めたり、精神的に苦しめる職場では無かったのは良かったかな。…「拗らせ系」の女性の典型みたいな姉のみのりが、ちょっと可哀そうで、それでいて、憎めない不器用さがあって、嫌いではなかったです。寧ろ、可愛くて、アクティブなひらりに少し、コンプレックスを感じていました。(私も多分、みのり系の女性って事なんでしょうね)
仰る通り、本音をぶつける会話に、その頃のこのドラマを見ていた女性達は、溜飲が下がっていたでしょうね。私には、少し下世話なドラマかも知れないけど、橋田寿賀子さんのドラマの凄まじい女性の自己主張(というよりも、少しヒステリーと表現した方がいいかな)の系譜の様にも思えます。お茶の間ホームドラマの空々しい予定調和とか、ワザとらしい一家団欒とは違う女の人の本音が溢れていたのでしょうか。
ただ、今の私は、そういう怖い本音をそっと隠して、さりげなく、ドラマの中で見せていた向田邦子さんの方が、実は好きなのは本当ですけど…。
それから、ドリカムの「晴れたらいいね」は大好きな曲でした。橋田寿賀子の「春よ来い」もユーミンでしたし…。このドラマは、主題歌の魅力にも支えられていましたね。
Commented by teri-kan at 2023-06-03 00:40
まるさん様、こんばんは。

>私も多分、みのり系の女性って事なんでしょうね

私もみのりとひらりならみのり系……というか、みのり的なものはどの女性も持っているのではと思います。コンプレックスのない人なんてそうそういないし。

ひらりはあまりにヒロイン的で、ドラマとしては絶対正義なんだけど、姉妹関係で言えば実は上下関係が結構あって、みのりがナチュラルに姉の権力を振るっているのが印象的ですね。
元々の性格の違いもさることながら、姉妹であるがゆえの姉気質、妹気質も二人の違いになっていて、いろいろと見どころのある内容になっていると思います。

橋田寿賀子さんのドラマの系譜というのはそうかもしれませんね。

>このドラマは、主題歌の魅力にも支えられていましたね

それは絶対だと思います。
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by teri-kan | 2023-06-02 00:00 | 朝ドラ | Comments(2)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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