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セブルス・スネイプ考

純血とマグルの混血。マグルの父親が母と不仲だった上、貧困による差別を受けたせいもあってかマグル差別主義者に育つ。不遇な少年時代の彼の慰めは自分が魔法使いということだけで、リリーを知った時の喜びはまさに「最高の仲間を見つけた」というものだったろうが、彼女の姉に対する愛情を理解することは全く出来なかった。
ホグワーツ入学後、スリザリン寮という環境のもと闇の魔術にのめり込む。自らの力を存分に発揮できるタブー無しの魔法は才能ある彼には魅力的で、当時隆盛を誇っていたヴォルデモートの純血主義思想も彼の理想だったと思われる。しかしそれらはマグル生まれのリリーとは決して相容れないものであり、二人の決裂は時間の問題だった。
自分の志向するものとリリーとの埋めきれない溝についてどのように悩んだのかは描写がない。自分の主義主張が間違っているとは端から考えなかったろうし、かといって闇の魔術やマグル蔑視が絶対的に正しいと胸を張って言えたとも思えない。しかしなぜリリーが純血でないのか、せめて混血であったらという悩み方はしたかもしれない。血筋でなく本人の資質がその人の価値を決めるということを、リリーを通して既にスネイプは知っていたはずなのに、自分のプライドを優先させたがために最悪の言葉でリリーを傷つけ、結局彼は正道に生きるチャンスをふいにしてしまう。リリーとの断交後は死喰い人まっしぐらで、たくさんの人間をマグル・魔法使い問わず殺したことだろう。
これが彼の人生の前半部分で、後半生はダンブルドア側の二重スパイとしてヴォルデモート滅亡に協力し、全ての人間に誤解されたままヴォルデモートに殺害された。






なぜかファンが多い。愛に殉じた英雄如き扱いで、特に7巻ではダンブルドアをこきおろしてまでスネイプの肩を持つ意見をよく見かける。
確かにダンブルドアにいいように使われた感は否めず、またリリーに捧げた愛は素晴らしいものではあるが、しかしそれと彼の人間性とは別であり、全巻通してみれば決して誉められない人物であるのは明白である。
他の教師には見られぬ自寮への露骨な贔屓、(ハリー目線の描写のためいくらか差し引くにしても)グリフィンドール生への嫌味や嫌がらせ、成績の悪い者へのあからさまな侮蔑など、どう見ても公平さとは無縁だ。ジェームズへの恨みも度を越しており、親にそっくりだからという理由で自分をいじめたわけでもない息子に復讐するかのように当たる始末。いつまでたっても死者を冒涜するかのような恨みつらみの羅列で、読んでいてこちらが辟易するのも仕方ないだろう。
皆が評価しているヴォルデモート討伐に果たした役割についても、結果的にその功績は大となったが、それはたまたま予言の子にリリーの息子が選ばれたからであり、もう一人の候補者ネビルが攻撃されるのだったら何の躊躇いもなくロングボトム親子を見殺しにしただろう。たとえネビルが生き残ったとしてもダンブルドアに仕えてネビルを影から見守るなどする事はなかったはずだ。
ようするに彼はリリーしか大事なものがなく、それ以外は全く取るに足らない事なのだ。ハリーを守りはしたがあくまで彼女の息子だからであり、息子本人の人格を認めようなど考えたこともない。そもそもリリーの人格をどこまで理解していたかも疑問なのだ。彼女の大事に思う家族や友人達への差別的態度を見ればそれは明らかであり、ようするに根本的な善良とか博愛とかいったものが徹底的に欠けているのである。
これほど教師に向いてない人物もなく、ホグワーツという舞台にいたからこそその歪みが全面的に表れたと言えるだろう。そういう意味では損な人生を生きた人ではある。本来彼にふさわしい場所は企業や大学の研究室のような研究三昧の日々を送れる所に違いないからだ。
最後までヴォルデモートに真意を見抜かせなかったのは特筆すべき快挙で、もしかしたら史上最高の閉心術士かもしれない。素直に感情を表わせたのはダンブルドアの前だけだったが、ハリーに向けた6巻の「臆病者と呼ぶな」は心からの叫びだった。何を理解されなくてもそれだけは誤解されるのが嫌だったらしい。
スネイプの勇気を称えてダンブルドアは組分け帽子の判断に疑問を呈すが、しかし性格を考えればやはりスリザリンしかありえないだろう。スリザリンも勇気を尊ぶが、その勇気はグリフィンドールのそれとは違う。グリフィンドール的勇気を持っていたなら、ヴォルデモートがポッター親子を襲った時、死を覚悟してでもそれを阻止せんと自ら動いたはずだ。裏でダンブルドアにコンタクトを取るといったあたりに彼のスリザリン的な気質が現れていると言えよう。

この物語の重要なテーマ「勇気」に照らせばスネイプは確かにヒーローの一人であり、それには全く同意。有能さに至っては文句のつけようがない。しかしそれがために全てを肯定するような真似は出来ない。もう十分いい大人なのだ。十代のハリーやロンを欠点込みで見守るようにはどうしても彼を見られないのである。
by teri-kan | 2008-11-05 15:49 | ハリーポッター原作 | Comments(6)
Commented by 沌夕 at 2011-07-27 01:18 x
はじめまして。スネイプのファンが通ります(笑)

あまり解り易くは書けませんが、そういう歪んだ純粋さにファンは惹かれるのだと思います。
Commented by teri-kan at 2011-07-28 01:46
沌夕様

はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。スネイプファンの方に書きこんでいただいてとてもうれしいです(笑)。

上の文を書いた時は、7巻が発売されてネット上でもものすごく盛り上がっていた時期だったのですが、あまりにスネイプ賛美の声が大きかったので、逆に違和感を抱いたというのが大きかったのです。
ダンブルドアやジェームスをボロクソに叩いて無条件でスネイプを称える意見を結構目にしましたのでね、ちょっとそれは違うだろうと、そういう思いもあってかなり厳しめに書きました。

>歪んだ純粋さ

そうですね。私も不器用な人だなあと思います。
不器用な分リリーへの愛は際立って純粋に映って、スネイプという人を深みのある人物にしてると思います。
Commented by のの at 2011-07-31 22:17 x
はじめまして、通りすがりの者です(^^

これを読んでいくつもうんうん、と納得させられました。笑
スネイプファンには痛い言葉かもしれませんが
幻想のスネイプではなく、本当のスネイプを鋭く捉えられているんだなあと思いました。
でも、スネイプの真意を知ると彼を憎むなんてできなくなりますし
むしろとても愛しくなってしまう人物ですよね。
1番考えさせられるキャラクターです。

あくまで私の見解なのですが、たぶんスネイプはダンブルドア以前は人を殺していないのではないでしょううか?
プリンスの物語でダンブルドアとの会話に、
「あの少年(ドラコ)の魂はまだそれほど壊されておらぬ」
「それではダンブルドア、私の魂は?」
「老人の苦痛を回避する手助けをすることで、きみの魂が傷つくかどうかはきみだけが知っていることじゃ」
というのがあったので、この時点でスネイプの魂は損傷されていない
=人殺しをしたことがないっていうことなんじゃないかなあ…と思います。
まあ死喰い人ならばせめて他の許されざる呪文は使ったんだるうなあーとは思うのですが。

うう…主さんのようにうまく書けなくて申し訳ないデス。
Commented by teri-kan at 2011-08-02 00:12
のの様
はじめまして。コメントありがとうございます。

スネイプが死喰い人時代に人を殺したかどうかですが、私もダンブルドアとの会話から「誰も殺してないのかなあ」と思ったことがあります。
でもヴォルデモート絶好調のあのご時勢で一人も殺してないなんて死喰い人の名折れじゃないかと思うし、前後関係考えたら殺してる方が納得なんですよね。

>主さんのようにうまく書けなくて申し訳ないデス。

全然そんなことないです。とてもわかりやすかったです。
私もこの点についてはどうかなと思っていたので、ご指摘いただいてありがたかったし、実は「やっぱり殺してなかったのかな」と、今ではかなり揺らいでいます。

ただ、そうなるとまたまたスネイプ像が複雑になってめんどくさい事この上ない(笑)。殺したかったのに殺す機会に恵まれなかったのか、殺したくなかったから殺さなかったのか、そこの見極めは難しいし、それによってまた見方が変わってきますね。

とまあ、こんな感じで、すみません、きちんとした返事になっていませんが、今のところこのように考えています。
スネイプは複雑と単純が入り混じってて難しいですね。
Commented by リツコ at 2015-01-21 18:29 x
何年か前の記事にコメントしてごめんなさい。

わたしの周りでもスネイプ先生を好きな人間が多かったのですが、自分はとっても好き!とはなれませんでした…。

この記事でもおっしゃっていたとおりリリーに対する愛や物語で果たした役割はすばしいと思うのですが、七巻以前でのハリーへの態度、贔屓、不公平な減点などが打ち消せるわけでもありません。全体的に性格はいいとは言えず、大人気ないひとだったんだなあと常日頃おもっていたので

客観的な鋭い意見をかかれていてとてもしっくりきました
Commented by teri-kan at 2015-01-22 11:19
リツコ様

こんにちは。はじめまして。
このブログは年月関係ない記事が多いので、古いものへのコメントも全然OKです。
むしろウエルカム。
コメントして下さってどうもありがとうございます。

スネイプは興味深い人ですが、褒められるような人でもないので、好みが分かれますよね。
嫌いな子供を守らなきゃいけなかったのだから、しんどかっただろうなあとは思いますが、ハリーに対してだけ酷いわけでもないので、やっぱり問題のある人だったと思います。

>大人気ない

そうですね。
その言い方がしっくりくるかもしれませんね。
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