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「悪魔の美しさ」(1949)

BS放送されたものをDVDに録って鑑賞。昔一度見たことがあったが細部は完全に忘れていたので結構楽しめた。

いろいろな見方のできる映画だと思う。
「ファウスト」に親しんでいる人から見るとまた別の感想を持つのかもしれないが、「ファウスト? なんだったっけ、ゲーテ?」くらいの知識しかない自分にとっては「名前だけ知ってる有名人」というだけの主人公だ。
「メフィストフェレス」も同様。「悪魔」というだけで何をしたかはよく知らない。

だから最後天使(?)の像がクローズアップされ妙に心洗われる音楽が流れてくるに至って「ああそうか、これは神様も存在する映画なんだ」と理解するのである。ちょっと遅すぎるのだが、それがわかって映画を思い返すとなかなか面白い。

科学と信仰の比較、最高の頭脳と文盲のジプシー娘との交流。悪魔との契約は軍事産業の発展を推し進め、しかし悪魔の為すこととペテンは全く同質のものでもある。
魔王は手下の悪魔を救わず見殺しにする。じゃあ神は人を救うのか?
アンリが救われたのは彼を愛する女のおかげだ。彼女は聖母マリアを信じるが、しかし祈りではなく彼女のとった行動が実際には彼の魂を救うことに繋がっている。
何かを成すのは人であり神でも悪魔でもない。映画では一見科学は悪いもののような描き方をされているが、よく考えればそうではなく、人の手に余る科学の暴走を警告しているといった方が正しいだろう。描かれているのはペテンをしかける悪魔と、それに嬉々として乗っかる人間達の欲望であり、ただ1人純粋な人物として描かれている女があわや魔女として処刑されそうになってしまうという、人の判断一つでどちらにも転びうる状況の危うさだ。


あの公国はもう破綻するしかないんじゃないかな。「悪貨は良貨を駆逐する」じゃないけれど、まともなお金残ってないでしょ。
国が混乱して人の心が乱れれば、悪魔はつけ入る隙ありまくりで人間の魂狩り放題になるんじゃないかと思ったけど、よく考えたら彼らが好むのは「善い魂」なんだよね。善い魂が堕落する様を彼らは何より楽しんでるようなので、ファウストの魂に狙いを定めたのは、彼の魂が騙されやすい「無垢さ」を持っていたからではないかと、逆に思ったりもする。

結局学者バカって感じだったんですかね。でも錬金術に手を出してるんだからまともじゃないのは確かだ。
金が欲しかった?それとも名声か。欲望を押し殺してストイックに生きてきたことが自身の生涯を後悔する原因でもあり、悪魔につけ込まれた原因でもあったんだろなあ。
教授はどういう人生を送っていたらよかったんだろうね。結果的に若返って愛を得て、彼の魂は大いに救われたんだけどさ。


ジェラール・フィリップとミシェル・シモンが素晴らしい。だんだんドツボにはまっていくアンリと、小憎たらしくもあり愛嬌もある悪魔の関係がGOODです。

登場時の美しいジェラール・フィリップも魅力的。
あの笑い声、ありゃ本当に悪魔だ(笑)。
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by teri-kan | 2008-12-08 17:30 | フランス映画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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