「オルフェウスの窓」その3

ユリウスは登場時から既に偽りの性を生きており、後に実際に犯罪を犯して本物の罪人になってしまいます。更に二重に記憶を失い、罪の意識、愛する人を自らの失敗で失った悔悟から逃れます。でも結局最後の最後で思い出さされてしまう。おそらくこの場合忘れていたことも彼女の罪なのです。

思わぬ形で殺人の報いを受けたことは、受け入れがたいにしろまあ仕方ない。己の罪深さに苛まれながら死んでいく様は哀れですが、そもそも彼女の人生は最初から無理がありすぎました。
問題はアレクセイとの関係です。というか、ここまできたらそれだけが問題です。哀れな彼女の魂を救えるのは彼との愛情関係だけなのですが、しかしそれがどうにもこころもとない。

彼女、アレクセイとの愛をどれだけ覚えてるんでしょうか。愛し愛された記憶、ちゃんと魂に刻まれてるのでしょうか。

アレクセイもユリウスも川に流されて、一見いつかは大海のどこかで出会うようにみえるけれど、私は二人の魂は出会えないままのような気がして仕方ないのです。ユリウスの魂はとことん呪われてて、死んでなお苦しんでるような気がするのです。得たような気がする愛はなぜかおぼろで、求めようにも求められなくて永劫さまよっているんじゃないかとさえ思う。
だから読み終わっても虚しさばかりが残る。辛い人生だったけどあの世で幸福になってるからいいよねなんてどうやっても思えない。
あまりに不安定であまりに脆く、本当に本当に、悲しいほどに脆弱なのですよ、ユリウスは。


救いのない話です。あの愛が嘘だったとは思えない分救われない。
なのに「素晴らしきかな青春!」で終わってるところがなんとも……。


そしてまた第1部のページをめくり、輝かしかった学生生活を振り返って心を慰めるんだ。
当時は苦しいと思っていたはずの青春時代なのにね。
アレクセイは素性を偽り、ユリウスは性を偽って、二人とも本来のものではない自分を過ごしていたというのにね。

枯葉のシーンだけが彼らの真実なのですよ。だからとても美しい。
でも今では遠い幻影です。
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by teri-kan | 2008-12-17 11:07 | 漫画 | Comments(0)
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