2012年 07月 25日 ( 1 )

「日本霊異記の世界 説話の森を歩く」

三浦佑之著、角川選書。

「日本霊異記」とは平安時代初期に書かれた日本最古の説話集。
オリジナルを読むのは敷居が高いけど、本書はテーマ別にお話を紹介している上、解説付きでわかりやすく、初心者に向けた入門書といっていいと思います。



「日本霊異記」に記された説話のいくつかは長い年月をかけて形を変え昔話となり、現代まで語り継がれている……。
ということで、一寸法師や浦島太郎の原型のような話も紹介されているんだけど、読みながら「昔話ってどのくらい昔の話なのかなあ」と以前考えていたことを思い出しました。
アニメの「まんが日本昔ばなし」をたまたま大人になって見た時に、おじいさんとおばあさんの生活様式がやたら気になって、「この着物や食事の感じだと江戸時代後期の生活レベルかな。でも江戸時代だと昔話としては新しすぎるから室町時代かな」といった疑問が浮かんだのです。
本書を読んでてそれを思い出して、昔話の時代を特定させようとか野暮の極みだったんだなと気付かされたのですが、アニメで絵がついたからといってその絵に目を向けすぎちゃダメですね。いつの時代も説話や昔話は昔々のお話。同じ話でも平安時代の人間が聞いたなら彼らが想像する登場人物の髪型はみずらとかで、現代人なら江戸時代辺りのちょんまげ。
まあ現代人がみずらスタイルの人達を思い浮かべたっていいんですけどね。日本の昔ということには変わりないんだし。

本書はそういった「時空を越えて昔の人と繋がってる感」が感じられるのがいいです。「日本霊異記」に出てくる人物は主に奈良時代の人間ですが、1300年前でも人間は人間で変わりないと思えるし、庶民感情はやっぱり庶民感情だなと思えるし、怪異伝承とか現代では考えられない不気味話には当時と現代の科学と信仰の違いを感じさせられるし、特に怪異話は超絶ぶっとんでいて、お話としては最高だったりする。

まあ、全体的に説教くさいのがちょっとなあという気はしますが。
話のオチも完全にパターン化されちゃってるようだし。

「日本霊異記」は著者がお坊さんで仏教説話がメインだから、説教くさくなるのはしょうがないんですよね。
良いことをしたら良い報いを受ける、悪いことをしたら悪い報いを受ける。動物は大切に、いじめたり殺したりしちゃいけません等等、本書によるとそういった概念は仏教導入以前の日本にはなかったということで、こういった仏教説話が日本人の道徳心を高め、より文明人として進歩させたというのならば、ここに書かれている説話こそ日本人の道徳心の原点と言っていいのでしょう。

感心するのはその道徳心は今の日本人にも通じるもので、こんな昔の教えを未だに実践してるのがすごいというか、今でも言われる「悪いことをしたらばちが当たる」とか、「ご飯を食べてすぐ横になったら牛になる」とか(これは怠けてると重労働させられる牛に生まれ変わるよという戒めの名残ではないかと思う)、「情けは人のためならず」とか(他人に良い行いをすれば回り回って自分の身に返ってくるの意)、行いと報いの関係って仏教伝来以来1300年か1400年かかけて、徹底的に遺伝子にすり込まれてるのです。
まあ道徳心というより、宗教心?
日本人は無宗教なのではなく、宗教が日常の生活に浸透しているのだと言ってる人がいましたが、八百万(やおよろず)の神々や原始的な先祖崇拝と一緒に仏教もこういった形で日本人に沁み込んでるんだということ、本書を読んでると成る程と思えます。



というわけで、この先は報いについて最近思うことを。
私は宗教については全くの不勉強ですが、いろいろな出来事を合わせて思うところをちょっと書いてみます。





大問題になっている平成大津事件
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by teri-kan | 2012-07-25 12:23 | | Comments(0)