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「エロイカより愛をこめて」その4

その3から随分あいてしまいました……。



冷戦後の作品は舞台が格段に広がって、さっそくロシアやルーマニアといった鉄のカーテンの向こうだった場所が登場します。
新興国として急激に台頭してきた中国も出てきます。が、中国はちょっとシャレにならんというか、マンガの中で笑ってすませるにはリアルが過ぎて腹立たしさの方が勝る。
取り上げる題材には細心の注意を払う必要があるのかもしれませんね。グローバルな時代ですが、エロイカは笑ってすませられる程度に日本から遠い地の、遠い人達が織り成すドタバタ劇として楽しむのが無難で、中国ネタを扱って以降は概ねそのようにストーリーも展開していると思います。

ソ連は崩壊したけれど、ミーシャは大変良いキャラクターで、出来の悪い彼の部下も非常に愛すべき人達だから、彼らが出てくるのを冷戦後でもこちらは待っているし、彼らのいない「エロイカ」なんて考えられない。
というわけで、ロシアになったとはいえ事件は必然的に旧ソ連の悪の遺産にまつわるものが多くて、パターンも決まってるといえば決まってるのですが、それでもネタに事欠く事はないんですね。
いやあ、ホントにソ連って悪の巣窟みたいな国だったんですねえ。

パターンが決まってるというのはストーリーだけではなく、むしろキャラクターにこそ確固たる性格が確定していて、現在ではキャラクターが物語を進めているといっていいでしょう。
昔もキャラが話を進めていたのだけど、もっぱら伯爵と少佐の強烈な個性がそうさせていたのであって、現在の彼らはどっちかというと落ち着いてきていて(歳とったからか?)、今はむしろ周囲の人間のキャラの濃さでストーリーが進む感じです。
特にA君、G君、ジェイムズ君は中断前よりも濃さが2倍にも3倍にもなっています。ジェイムズ君なんかすでに人間じゃなくなってるし。
A君はすっかり少佐のお付秘書のポジション獲得で、ほとんどボーナムと対ですね。伯爵とボーナム、少佐とA君のそれぞれの会話は、以前よりずっと増えていると思います。

ちなみに私は今のG君とても好きです(前から好きだけど)。単純に可愛いなあと思うし、Z君とのコンビもいい感じ。彼女は少佐と絡んでも伯爵と絡んでもいい味出すので良いですね。

冷戦後の話で好きなのは、いろいろあるけど一番は「ビザンチン迷路」かなあ。登場人物がいい。
あ、青池保子はおフランス人があまり好きじゃないんですね? わからないでもないけど、あまりにも好意的に描かれてないのが笑える。
あー、伯爵が嫌いなのかな、おフランス。
思えば中断前もフランスが舞台になったことってほとんどなかったし、微妙に避けられてましたもんね。



この「その4」でとりあえず「エロイカより愛をこめて」は完了です。
「その1」を書いた時は37巻が出た頃だったのに、こないだ38巻が発売されましたからね……。
あきすぎてしまってすみませんでした。
by teri-kan | 2011-09-08 10:38 | 漫画 | Comments(0)

「エロイカより愛をこめて」その3

少佐の行くところ行くところエロイカ盗賊団ではなくエロイカ3人組が現れる……といった形に移行する経緯は非常にスムーズで、本当に「いつのまにか」といった感じ。
その「いつのまにか」の理由は、もともと3人でよく行動していたという以外に、番外編「ミッドナイト・コレクター」がその次の本編「9月の7日間」に完全に繋がっているのが大きいと思います。そのせいもあってかこの「9月の7日間」は「思えば遠くへ来たもんだ」といった長旅感にとことん浸れる。

伯爵と、特に少佐の移動距離がものすごいんですよね。
ボン→ロンドン→ボンへ帰る途中でハイジャック→オスロ→タリンと見せかけてアムステルダム→スペインのド田舎→サラゴサ→ローマ→アレキサンドリア→砂漠の遺跡。
一つの事件でヨーロッパ中を旅するお話はこれ以降パターン化しますが、この目先の出来事に導かれて果てしない旅をするというのが「エロイカ」最大の醍醐味なんですよね。途中で何が目的だったのかわからなくなってしまうくらいあちこちに行くのが楽しいのです。

伯爵が完全に3人で行動するようになった「9月の7日間」の他に、この時期のお話としては「笑う枢機卿」と「第七の封印」と「皇帝円舞曲」があります。
「笑う枢機卿」はタイトルのせいもあってどこかのどかで、愛すべき少佐の部下達をとことん楽しむお話。「第七の封印」はもっとハード。少佐とミーシャの戦いがメイン。そして「皇帝円舞曲」は東西エージェントがウヨウヨうごめくウィーンが主な舞台で、まさしく冷戦時代ならではのスパイ合戦を見せます。

この頃になると少佐も伯爵も年をとって、少女マンガの主人公にしては結構いい風貌のおじさんになっています。これは作中で時が進んだというより作者の絵柄がそうなったからで、どちらかというと現実の時の流れの方に感慨深いものを感じます。
「皇帝円舞曲」で1986年だから足掛け十年。
十年でこの分量だからものすごい仕事量ですが、とにかく量といい質といい文句なしの作品で、だからこそ中途半端に途絶えてしまった感があっても、ここまでの話で十分満腹感を味わえる。
いや、満腹以上の満足ですね。

やっぱり面白いですよ、手抜きは一切ないし。
で、この手の抜かなさ加減は、ほぼ十年後に連載再開されてからも、見事なまでに継続されているのでした。

青池保子ってすごいなあ。





続く
by teri-kan | 2010-12-10 08:45 | 漫画 | Comments(0)

「エロイカより愛をこめて」その2

個人的に本作の魅力は、任務一筋の少佐と、美術品最優先の伯爵の、それのみを追いかけるがために結果として果てしない所まで来てしまうという、その長々とした道のりにあると思うのですが、作品としてそういう方向性が出てくるのは、本編第6番目の「イン・シャー・アッラー」あたりからではないかと思います。
とはいえこの頃はまだ伯爵は何人もの部下を抱える大盗賊団の首領。後のお話のように身軽にあちこち動き回るわけではありません。
でも部下が何人もいるから大掛かりなことができるし、やっぱりにぎやか。「アラスカ最前線」と「グラス・ダーゲット」はたくさんの人間が入り乱れて人間模様も面白いです。

「アラスカ最前線」は少佐の魅力が全開ですね。これまでで最も危険な目に合うからですが、FBIと渡り合い、狼の群れと睨み合い、KGBには囚われて、でも冷静沈着。伯爵と対峙する時だけは頭に血が上りますが、その激しさすら「アラスカ最前線」では面白い、というよりカッコいい。絵もこの頃が少女マンガ的には一番らしくていいんじゃないかな。特に少佐の目はたまらんです。

「グラス・ターゲット」はアラスカとはうってかわって街を舞台にしたお話。珍しく一つの場所に居座って、あちこちに飛ばないストーリーになっています。それがかえってこの話の魅力で、これだと伯爵の部下が大所帯である設定も生きる。
ですがそれ以上に盗賊団の本領をいかんなく発揮したのが、番外編の「ミッドナイト・コレクター」。
実は私、なぜこれが番外編扱いなのかわからないのですが、伯爵の回想部分が多いとはいえ本編と遜色ないこの作品が番外ということは、結局このシリーズの要は「NATO情報部の任務」そのものにあるということでいいのかな。即ち「エロイカより愛をこめて」はスパイアクションものという事が絶対で、それを彩る様々なものはあくまで彩りということです。

「ミッドナイト・コレクター」は美術品泥棒ストーリーとしては王道だと思うし、ある意味「エロイカより愛をこめて」というタイトルにふさわしい内容であるのですが、でも番外編なんですよね。

そしてこれを最後にエロイカ盗賊団は規模を大幅縮小。
現在見られるような形にシフトしていきます。



続く
by teri-kan | 2010-11-19 09:24 | 漫画 | Comments(0)

「エロイカより愛をこめて」その1

青池保子の代表作。
1976年に連載が開始された少女マンガで、一時長期中断をはさむも現在絶賛継続中。
大変有名な作品なので登場人物やあらすじは詳しくは書きませんが、おおざっぱにいってしまえば、NATO情報将校のエーベルバッハ少佐と国際的美術品泥棒エロイカ(伯爵)との、スパイアクション怪盗コメディ物語です。

大変長いマンガで、内容的には大体以下のように分けられるのではないかと思います。

1.初期の主人公・超能力3人組が登場する時期
2.伯爵の部下が大所帯だった時期。NATO情報部VSエロイカ窃盗団という構図がメイン
3.伯爵の部下が2人になり、NATO情報部の仕事をエロイカ3人組がかきまわすといった
  形の定着
4.冷戦後~現在

1.の時期は大変短く、後から登場した少佐に超能力3人組はあっというまに駆逐されてしまいました。
まあ仕方ないですね。彼らは3人揃ったとしても、少佐と伯爵とはスケールに違いがありすぎました。

この時期のストーリーは、多分初めて読む人は驚くと思います。
青池保子のこれまた傑作「イブの息子たち」を読んでる方には馴染みの展開ですが、現在の若者がこれを読んでどう思うかはちょっとわからない。70年代のポップカルチャーについていける人は大丈夫だと思うけど。
少佐が登場したら現在の「エロイカ」の雰囲気も出てくるのですが、本当に初回のストーリーは今とは全く別物なんですよ。読み進めるにあたっては、これを超えるのがもしかしたら一番のハードルかなあ。

ただ慣れたらこの時期のお話も面白いです。より楽しむためには「イブの息子たち」と「エル・アルコン」を読むべきではあるけれど。



初期の伯爵はキザがマント羽織っているような青年で、ただただ美麗の一言。
現在はかなり崩れてるけど、この頃は行動の一つ一つに美学がにじみ出てた。

いつ頃からあんなになっちゃったかなあ。
やっぱりジェイムズ君の進化(劣化?)に比例してるかな。
伯爵が華麗な美青年ならジェイムズ君も最初は美青年だったんですよねー。顎のスッキリした、痩せ型の黒髪美青年。
今ではすっかり地球外生命体になってしまったジェイムズ君ですが、最初はとりあえず(変とはいえ)普通の人間だったのでした。



続く
by teri-kan | 2010-11-12 09:31 | 漫画 | Comments(0)

「アルカサル-王城-」

青池保子の傑作長編マンガ。
中世スペインのカスティリア王ペドロ1世の生涯を描いた作品で、途中長期休載していましたが、数年前に完結。現在文庫でも発売中です。

とにかく波乱に満ちた生涯を送った王様で、一言「読んでくれ」としか言えないのですが、非常に魅力的な人です。作者の彼に対する愛情がとてもよくわかる。

実在した人物なので、彼の後半生がどのようなものなのか、知ってる読者は既に知っているわけですが、そうであるからこそあの長きにわたった休載は、これで終わるならそれでいいかと思えるものでもありました。
彼の最期はかなり辛く、それを見るのはしのびない。それほど本作のペドロ1世は偉大で、苦労の末掴んだ栄光の中にいるままなのが似合っていると思わずにはいられないのです。


私はすっかり本作のドン・ペドロのファンになってしまったので、外伝1巻に載っているような愉快な彼を楽しむ話が今は好きです。
彼の生涯は過酷すぎるんで、せめてマンガは楽しい部分を強調してもいいんじゃないか。
そういうわけで、外伝の続き、楽しみに待ってます。
by teri-kan | 2009-09-02 11:00 | 漫画 | Comments(0)

「修道士ファルコ」

青池保子の現在も執筆中(もう終わった?)の少女マンガ。

舞台は中世ドイツの修道院(注:ちょっとだけスペイン)。
日々お勤めに励む主人公と彼をとりまく修道士達という、なんだか固そうなキャストですが、ストーリーは全然堅苦しくなく、個性豊かな彼らが織り成す物語に、つい笑顔になってしまう作品です。

小心者の修道院長に功利的な副院長、精神が半分あっちの世界に行ってる老修道士、美意識丸出しのうるさいヤツに俗世の習性が抜けない元警察(?)の同僚……皆愛すべき人達なのです。

愛すべき最大の人物・主人公ファルコは、元は素晴らしい剣客で、その腕を買われて修道院をめぐって起こる難事件に幾度も最前線で対峙する羽目になります。もちろんその都度反省し懺悔するのですが、次々事件が起こってまたもや剣を取ることに。
そんなこんなで彼はいつまでたっても彼が目指す「心安らかにお勤めする」という日々からは遠いところにいて、なんだかいつも悩んでいます。でもあるがままに全てを受け入れ、きちんとそれらに向かい合う彼はとても好人物。読者だけでなく物語中でも、修道院内でも俗世でも、彼は妙に人に慕われるのです。

好いてくれる人の中で最も重要な大物は某王国の王様なんですが、実はこれがあるためこの作品はより楽しむために「アルカサル-王城-」を先に読んでいた方がいいという難点があります。
もちろん読んでなくても最高に楽しめるけど、読んでいたら倍楽しめるのは間違いない。

今もこの二つの作品は微妙にリンクしてますのでね。
「アルカサル-王城-」は長いけど大傑作なんで、「ファルコ」とセットで楽しんだら良いと思います。
by teri-kan | 2009-08-24 14:51 | 漫画 | Comments(0)