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「NINE」(2009)その5

「NINE」というより「シカゴ」も合わせたロブ・マーシャルについて。

私は世間の評価に反して「シカゴ」を全然評価してないんですが、なぜかというと「こんな薄い話、映画と言っていいのか?」という思いがどうしてもぬぐえないからです。
でもその思いを具体的に言葉にするのは難しかった。
そのためこのモヤモヤを説明してくれる人に巡り合うためネット上をウロウロしてたんですが、この度やっと見つけたのでした。
私の「ミュージカル映画好きなのに「シカゴ」が好きじゃない理由」を説明してくれた文章を。

http://strongerthanparadise.blog122.fc2.com/blog-entry-101.html

個人ブログを無断で貼り付けてしまって申し訳ないんですが、興味のある方は一つのロブ・マーシャル考察として読んでみていただけたらと思います。大変長い文章だけど「シカゴ」の舞台をロブ・マーシャルはどのように映画に作り変えたか、その過程で作品に何が起こったのか、その辺のくだりは参考になると思います。
私としては「そうそう、私のモヤモヤはこんな感じ」と結構膝を打つ気分だったので、今はとってもスッキリ。
「シカゴ」については、だからこれでもういいやって感じです。

でもこのブログ主さんは「シカゴ」以上に「NINE」をボロクソに書いていて、そこは私と合いません。まあこの方に限らずいろんな方の感想を見ていて思うに、「8 1/2」を観てる人はいっそのこと「NINE」は観ない方がいいんじゃないかな。絶対オリジナルの影響から逃れられないから。

「8 1/2」を観てる人の意見で一番不思議なのは、サラギーナや妻やママ達が歌う女の歌を、なぜ全てグイドの幻想と決め付けるのかなのですよね。おそらくオリジナルのそういったパートが全て主人公の幻想になってるからなんだろうけど、「NINE」のミュージカルシーンは全てそうとは言い切れないと思うんだけどな。(ロブ・マーシャルの意図は知らんが。)

だって妻の歌は妻の気持ちを歌ってるもの。妻の気持ちをグイドがあれだけ想像出来るなら、そもそもあの夫婦は離婚なんてしてないよ。妻の2曲目なんて、あれはグイドの幻想じゃなく試写室で向かい合う妻とグイドの「声にならない感情」を表現しているとしか考えられないでしょ。あの歌は妻の心の叫びで、ただ座っているしかできないグイドの姿は、妻の叫びを浴びてはいるけどそれが何なのか全く理解できていない男の姿ですよ。
試写室で普通の服装のまま歌ったらわかりやすいのかもしれないけど、それじゃ妻の痛々しさは半減しちゃう。あの痛々しいストリップは彼女のボロボロの心そのものだから、あの情景はあれでいいんです。

これに限らず「NINE」のミュージカルシーンは、グイドの妄想というよりグイドの心の状態を表してるといった方が正しいと思います。グイドの頭の中を映像化したというより心を映像化したという感じ。サラギーナの歌はもっと本能的で、体の記憶も混じってるでしょう。9才の少年の初めて「女」と出会った時の「興奮」や「威圧感」といった身体的な記憶が。
だからグイドはそういったシーンに対してとても無自覚。しかも女が歌っている分現実のグイドとのつながりがわかりにくい。でもグイドの心の状態を表現しているから、ミュージカルシーンは全てストーリーにつながってるし、ミュージカルが物語とブツ切りになってるなんて、全然そんなことない。

妻の歌なんて二つとも現在の夫婦関係が見事に表れてる良いシーンだと思うんですけどね。夫は妻の心の叫びなんて全然わかっちゃいませんよとばかりに終始呆然と座ってるだけで。
まあ彼女の歌だけじゃないけど、ホントにね、なんでこういうシーンを皆グイドの頭の中の幻想とか逃避による妄想とか受け取るのかなあ。
ちょっとよくわからないです。

まあ問題は、私のような観客は少数派で、大多数の人間はこの映画からそんなものを感じることは全くないという事実です。
これはもうロブ・マーシャルが悪いんでしょう。一部の観客しか楽しめないのなら、結局それだけの監督だったということなんだから。
で、私も「NINE」が好きとはいえ、ロブ・マーシャルの評価を上げたわけじゃない。だって「シカゴ」より「NINE」が「映画」になっているのは、基になっているのが映画だからに過ぎないと思うから。
あと、ダニエル・デイ・ルイスの演技力が非常に高かったということと。



「NINE」に対する不評の理由は理解できるし、特にフェリーニと比較されて批判されるのはロブ・マーシャルも覚悟してたと思うけど、でも絶対太刀打ちできないのは皆承知してる事実だし、だから「8 1/2」の一つ一つと比べて「NINE」を批判するのは、かえって野暮のような気もしますね。
まあ私も「8 1/2」を観てたら絶対比較しただろうし、オリジナルにどこまで近づけたかという見方しか出来なかっただろうけどさ。(その辺のことは「王様と私」でもちょっと書いてます。)
だからこれは元の映画も舞台も知らずにまっさらなまま観た方がいいかもしれません。そして素直にショーのシーンから登場人物の感情を感じる。

うーん、こう言っちゃなんだけど、これはかなり女向きの作品かもしれません。妻の心、愛人の心、母の心、娼婦の心……女の心が様々に出てくるし。
でもテーマは中年の男心なんだよね……。
ロブ・マーシャルはゲイを公言してるそうですが、かなり女心のわかる方なのかもしれません。男心と女心の絶妙なバランス感覚が、この映画には確かに見られますね。



ところで、「NINE」その4で私が長々と書いたグイドの苦しみは、世間では「ミドルエイジクライシス」と呼ばれるものなんだそうです。2のつく掲示板でミドルエイジクライシスに絡めた感想を書いていらっしゃる方がいて、なるほどーと思いました。
ちょっと勉強になりました。
by teri-kan | 2010-04-16 10:58 | アメリカ映画 | Comments(0)

「NINE」(2009)その4

「NINE」のテーマを考えるのにグイドの苦悩の解析は不可欠だということで、グイド・コンティーニさんの抱える問題について映画の流れにそって見ていきたいと思います。
この作業はホントーに野暮だと思うんだけど、内容が無いとか話が無いとか言われると、もう黙っていられないのです。
でも考えているうちに、この映画の評価が割れる理由もわかってきたんですよね……。

枢機卿への相談から始まる心の旅
by teri-kan | 2010-04-02 14:38 | アメリカ映画 | Comments(0)

「NINE」(2009)その3

「NINE」への批判に答えるシリーズのようになってます(笑)。

実は批判の内容は結構理解できるんですよね。でもだからこそこの映画の肩をもちたくなる。
というわけで、批判の一つである「スターの無駄使い」について思うことを。

存在だけで物語を表現できる役者
by teri-kan | 2010-04-01 11:20 | アメリカ映画 | Comments(0)

「NINE」(2009)その2

勇気を持って断言しよう、この映画はスルメ映画であると!

はい、観て来ましたよ、二回目を。
これは細かいとこまでとことん味わえるホントに良い映画ですよ。
でも本作の台詞はきっと正しいんですね。

「映画は言葉にすると死ぬ」

言葉にしきれないものを表現している「NINE」で感じたことを言葉にするのは、だから大変。
でも語りたいので語ります。巷にあふれるボロクソ評価に対抗するには、やっぱりこの映画を好きな人間がこれについて語るべきなのです。
たとえ語りすぎてキモがられても。

グイドとカトリックと映画
by teri-kan | 2010-03-29 10:58 | アメリカ映画 | Comments(0)

「NINE」(2009)その1

良かった! こういう映画大好き!
ミュージカル映画を観たなーって思える、本当に楽しい映画。でも中身は深い。
最後なんて泣きそうになりましたよ。主人公の人生(というか妄想)を彩ったたくさんの女達……もうあのシーンで「人生って素晴らしい!」って思っちゃいました(笑)。

人生は愛と歌と踊りなんです。
で、映画は人生そのものなんです。
そしてこの映画にはその愛と歌と踊りが満ち満ちているんです。
これを素晴らしいと言わずして何と言おうか。

ダニエル・デイ・ルイスはとても良かった。何度もオファーを断った彼を説得したという監督の気持ち、とてもよくわかりました。
だってこの役は本当に難しいと思うもの。主人公は脚本が書けなくて苦悩と焦燥の中にいるけれど、実は自分自身の人生を描けていないのだということを、心は薄々わかっているのに頭で理解できていない。しかもどんなに状況が悪化しても今までと同じやり方しか取れず、どんどん追い詰められていってしまう。
そんな苦しさを大仰に主張せず、でもしっかりと表現しながら、しかも7人もの強烈な女優達に負けないオーラを持つ男……となると、本当にハードルは高い。

ソフィア・ローレンの迫力やジュディ・デンチの貫禄にも負けない存在感、ペネロペ・クルスの妖艶さやニコール・キッドマンの美貌にも釣り合いがとれる風貌、マリオン・コティヤールの可憐さやケイト・ハドソンの溌剌さにも張り合えるチャーミングな男。

チラシやパンフレットの表紙を見たらわかるんだけど、実はこの主人公は女に囲まれているけどビシッと髪型を決めてスーツもバッチシ!って格好じゃないんですよね。ものすごく疲れてて、服もヨレヨレ。やつれきってる上に猫背で、なのに女に囲まれてるのが似合う。
なんで似合うかといったら、そんな彼を放っておけないと女が思うからで、やっぱり母性本能をくすぐる男なんですよ。ジュディ・デンチの作業机に寝っ転がる姿なんか最高。
いやもうさすがダニエル・デイ・ルイス。やっぱり上手い人です。



主人公ばかりを誉めまくっていますが、女優陣も皆よかったです。
特にマリオン・コティヤールの演じた妻は良かった。可憐で清楚だけど、内心を歌ったあの体当たりの下着ファッションミュージカルシーンは圧巻でした。
ああ、もう、あの妻の感情は、ツラい。ツラいです。
一方ケイト・ハドソンのファッション・ショー風のミュージカルシーンは超楽しい。ケイト最高。でもって脇を固める男どもがこれまたいい味出してるんです。あのシーンは秀逸ですね。

もう本当に楽しくて、いい映画だよーと皆に薦めたいのですが、ロブ・マーシャル作品で私が全然評価してない「シカゴ」はアカデミー賞を取っていて、「NINE」は一般的にはそこまでの評価じゃないっぽいんですよね。どうも私と世間の好みは違うらしく、だからあまり薦めてはいけないのではという気がしています。

でも個人的には本当に好きです、この映画。
どれだけ好きかというと、元になってるフェリーニの「8 1/2」を、こりゃ観ないといけないなと思うようになったくらいに好きです。
実は観てないんですよね、「8 1/2」。
今回の「NINE」で断然観たくなりました。
by teri-kan | 2010-03-22 04:09 | アメリカ映画 | Comments(0)